Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月14日 No.3400  環境政策の最近の動向について聞く -経産省の飯田産業技術環境局長から/環境安全委員会・地球環境部会

日本政府は、今年6月に開催するG20大阪サミットに向け、パリ協定に基づく「長期低排出発展戦略」(長期戦略)や、海洋プラスチックごみ対策に関するアクションプラン・戦略の策定に向けた検討を本格化させるなど、昨今、環境政策をめぐる重要な動きがみられる。

そこで、経団連の環境安全委員会(杉森務委員長、小堀秀毅委員長)と同委員会地球環境部会(榮敏治部会長)は2月28日、東京・大手町の経団連会館で合同会合を開催し、経済産業省の飯田祐二産業技術環境局長から、環境政策の最近の動向について説明を聞いた。説明の概要は次のとおり。

■ 長期戦略の検討状況

昨年8月から、長期戦略に関する有識者懇談会(「パリ協定長期成長戦略懇談会」)が開催されている。中西宏明経団連会長をはじめ経済界関係者に参画いただき、これまでイノベーション、ファイナンス、国際展開といったテーマについてヒアリングや意見交換を行ってきた。今後、懇談会としての提言を取りまとめ、6月15、16日のG20エネルギー・環境大臣会合に向けて、可能な限り早期に日本の長期戦略を策定する予定としている。

特にイノベーションの創出に向けては、経産省として、コスト目標を含むアクションプランの検討や、新たに「カーボンリサイクル室」を設置し、CCU(CO2の回収・利用技術)のうち、CO2を炭素資源として回収し再利用(リサイクル)するカーボンリサイクル技術の開発を推進するなど、さまざまな取り組みを進めている。さらに、企業が有する低炭素技術の国際展開を促す観点から、相手国の政策・制度構築への協力といったビジネス環境整備にも取り組んでいる。

またTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が2017年6月に気候関連の財務情報開示に関する提言を出したことを踏まえ、昨年12月に政府として世界に先駆けて「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFDガイダンス)」を発表した。さらに、今年2月にはTCFDガイダンスを補完するため、TCFD提言に沿った具体的な情報開示の事例を収集・整理した事例集を発表した。企業には、TCFDの提言に沿った情報開示を通じて、温暖化対策に関する主体的な取り組みを国際的にPRしていくことを期待する。

■ 海洋プラスチック問題への対応

海洋プラスチック問題はG20の主要論点の1つである。プラスチック自体は有用な資源であることから、適正処理・3R(リデュース、リユース、リサイクル)等を通じて、プラスチックごみの海洋流出を世界全体で防いでいく視点が重要である。

現在、中央環境審議会で「プラスチック資源循環戦略」の検討作業が佳境を迎えているほか、G20までに省庁横断的な「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」(仮称)も策定する予定だ。

経産省としては、新素材開発等のイノベーションに向けた「技術ロードマップ」や資源循環ビジネスを、経済成長を牽引する産業に発展させるための「循環経済ビジョン」(仮称)を取りまとめるべく、検討を進めている。

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飯田局長との意見交換の終了後、「パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言」(案)について審議が行われ、了承された。

【環境エネルギー本部】