Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年3月21日 No.3401  「パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言」を公表 -民主導のイノベーションを通じた脱炭素化への挑戦

2015年に国連で採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、2020年までに、今世紀後半(2050年以降)を展望した自国の長期戦略を提出するよう、締約国に招請している。こうしたなか日本政府は、今年6月に開催するG20大阪サミットに向けて成長戦略としての長期戦略(長期成長戦略)を策定すべく検討を進めている。そこで、経団連は3月19日、「パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言」を取りまとめた。

■ 基本的考え方

G20サミットの議長国となる日本は、裏付けのない数値目標の大小を論じるのではなく、長期戦略を通じて、イノベーションを軸とした温暖化対策を経済成長につなげる「攻め」のビジョンを国際社会に示し、共有していくことで、世界の温暖化対策をリードしていくべきである。

こうした考え方のもと、次の5点を提言している。

1.イノベーション

経済成長を実現しつつ、温室効果ガスの長期・大幅削減を実現するためには、「民主導の非連続なイノベーション」の創出が不可欠である。政府は、民間の研究開発・投資原資の維持・拡大を図りつつ、官民連携のもと、規制改革をはじめとする投資・事業環境の整備等に注力すべきである。

2.エネルギー転換

S+3E(安全性[Safety]+エネルギー安全保障[Energy security]、経済性[Economy]、環境適合性[Environment])を高い次元で確保したエネルギー転換を目指し、再生可能エネルギーの主力電源化をはじめ、安全性を大前提とした原子力の継続活用、次世代ネットワーク整備等に取り組むべきである。政府には、持続可能な電力・エネルギーシステムの将来像を示すことで、電力・エネルギー分野への投資環境を整備していくことが求められる。

3.地球規模での削減

企業は自らのグローバル・バリューチェーンを通じて、省エネ・低炭素型の製品やサービスを国内外に展開することで、「環境と経済成長の好循環」を実現し、地球規模での削減に貢献していく。政府は海外展開先における政策・制度構築への協力といったビジネス環境整備を通じて、企業の貢献を後押しすべきである。

4.民間のチャレンジの後押し

長期戦略では、わが国企業・団体が策定した「長期ビジョン」において示された考え方を取り入れることで、民間のイノベーションに向けた主体的なチャレンジを後押しすべきである。

5.ゴールに向けた柔軟なアプローチ

長期戦略において掲げるべきは、計画的に達成すべき「ターゲット」ではなく、目指すべき方向性としての「ゴール」である。「民主導のイノベーションを通じた脱炭素化」といった野心的なゴールを掲げ、複線シナリオとあらゆる選択肢を追求しつつ、柔軟に取り組むことが重要である。

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経済界は引き続き、イノベーションやグローバル・バリューチェーンの主たる担い手として、地球規模・長期の温暖化対策に、主体的かつ積極的に貢献していく。

【環境エネルギー本部】