Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年7月4日 No.3414  多様性が求められる組織のリーダーへの期待 -「第15回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催/冨田副会長が講演

冨田副会長

経団連は6月13日、会員企業各社の女性役員のさらなる活躍を応援する「経団連女性エグゼクティブ・ネットワーク」の活動の一環として、冨田哲郎副会長(東日本旅客鉄道会長)をメンターに迎え、東京・大手町の経団連会館で「第15回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催した。過去最大となる48名の女性役員が出席し、講演を聞くとともに意見交換を行った。講演の要旨は次のとおり。

■ 過去の経験とそこから得たもの

1987年に国鉄が民営化され、今年で33年目を迎える。国鉄時代、経営に主体性がなく、職員の意識も内向きで、ストライキが頻繁に行われるなど不毛な労使対立が続いた。モータリゼーションの激変に対応できず破綻に陥った当時の経験から、環境の変化に的確に対応することの重要性を学んだ。

民営化後は、「お客さま第一」とする意識改革と自主自立経営を目指した。また、過去の震災や事故の経験から、われわれの事業の社会的役割や地域の鉄道に対する期待、「安全」の大切さを再認識することができた。特に「安全」には「絶対」はなく、最後に頼りになるのは人間の力であり、それを社内に浸透させる重要性を感じている。

■ 仕事をするうえで大切にしていることとリーダーへの期待

仕事をするうえで大切にしていることが3つある。1つ目は、「鉄道の成長と進化」である。近年、技術革新に伴い鉄道の設備システムやメンテナンス手法が進化している。新しいシステムには必ず未知のリスクが存在するため、社員には「凡事徹底」と「新事挑戦」を示し、安全に対する意識改革を徹底して行い、「究極の安全」を追求している。2つ目は、「パブリックへの貢献、地域創生」である。交流人口拡大のための鉄道の輸送サービスの向上や、観光を通じた地方の活性化事業に取り組むなど、鉄道の社会的価値と経済的価値の両立を目指している。3つ目は、「新しいことへの挑戦、リスクへのチャレンジ」である。当社では、乗務員勤務制度の見直しなどの働き方改革を推進し多様性を確保するとともに、海外プロジェクトへの参画やオープン・イノベーションの推進など社員の挑戦の場を拡大する仕組みづくりにも積極的に取り組んでいる。社員の可能性を引き出すフィールドをつくることも、経営の大切な役割だと思う。

これからの社会に求められるのは、多様性と、多様性が生み出すイノベーションである。当社において女性の活躍が男性の働き方を変え、エキナカビジネスなどのイノベーションが起こったように、女性の活躍は日本経済を発展させる源になる。女性活躍のトップランナーとして働いてきた皆さんには、今後、男性社会に同化するのではなく、どんな状況にある人でもその人の持つ強みを発揮できるような組織をつくっていってほしい。

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講演後、現場において女性社員を受け入れる際の工夫や、組織風土の改革時に苦労したことや大切にしてきたことなどについて活発な意見交換が行われ、冨田副会長から多岐にわたるアドバイスが送られた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】