Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年7月11日 No.3415  コーポレート・ガバナンス改革などをめぐる経産省の近時の取り組みに関する説明会を開催 -経済法規委員会企画部会

経団連は6月12日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会企画部会(佐久間総一郎部会長)を開催し、経済産業省から近時の取り組みについて説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(坂本里和産業組織課長)

未来投資戦略2018および今年度の成長戦略実行計画を受け、6月28日に「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」として取りまとめる予定である。

実務指針は、グループ経営での望ましいガバナンスのあり方を幅広く示している。特に、上場子会社のガバナンスについて、支配株主である親会社と一般株主との間に構造的な利益相反リスクを指摘する声が投資家から上がっており、実務指針でその対応を求めた。 利益相反が生じ得る場面の具体例として、実務指針では、親子会社間の(1)直接取引(2)事業譲渡・調整(3)親会社による完全子会社化――を挙げている。

(1)、(2)の場面において、一般株主の利益に配慮した対応を行うためには、上場子会社の独立した意思決定を担保する体制の構築が必要である。例えば、上場子会社の独立社外取締役には、10年以内に親会社に所属していた者を選任すべきでない。加えて、それら独立社外取締役の比率については、3分の1や過半数等まで高めることを目指すことが基本である。

あわせて、親会社は、上場子会社を維持する合理的な理由等を十分に説明する必要がある。

■ 「公正なM&Aの在り方に関する指針」(坂本氏)

MBOに関する指針を改訂するかたちで、MBOと同様に利益相反構造のあるM&Aとして、前述の(3)上場子会社の完全子会社化を対象に追加し、子会社の一般株主の利益を保護するための公正な手続きのあり方に関する指針を公表する。

同指針は、何らかの拘束力を持つものではなく、ベストプラクティスの形成に向けた公正な手続きのあり方を示すものである。また、買収側の予見可能性を高め、企業価値を高めるM&Aの円滑な推進に資するものでもある。これは、現在、買収価格の是非が裁判で争われる際に、公正な手続きを取っていれば、原則として価格も公正であると認められる枠組みが存在しているためだ。

また、同指針では、公正な手続きを構成する具体的な公正性担保措置として「特別委員会の設置」「外部専門家の助言等」「マーケット・チェック」「マジョリティ・オブ・マイノリティ条件」「情報提供の充実」などを挙げており、このうち「特別委員会の設置」と「情報提供の充実」以外の措置については、特別委員会が必要性や実施方法を判断するという建て付けとし、個別のM&Aの具体的状況に応じた判断が可能な任意の措置として位置づけている。こうした建て付けは日本独自のものであり、誤解がないように周知を徹底していく。

■ 「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期課題に関する勉強会とりまとめ(案)」(松本加代企業会計室長)

企業と投資家との建設的対話を促進すべく、株主総会のあり方について議論を行った。株主総会の開催場所にいない株主が、インターネット等を用いて審議を傍聴、あるいは会社法上の出席をするハイブリッド型バーチャル株主総会について、法的論点、実務的課題を検討のうえ、同とりまとめを公表し、7月10日まで意見公募を行っている。

ハイブリッド型バーチャル株主総会の採用は、各社自主的に判断すべきであり、経産省として必ずしも実施を推奨するものではない。

【経済基盤本部】