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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年7月25日 No.3417 アジアグループと国際情勢や日米関係めぐり懇談 -ワシントン・リポート<62>

経団連米国事務所は6月20日、ワシントンDCを拠点とする戦略ファームであるアジアグループから、会長のカート・キャンベル元国務次官補、調査部長のシッダールタ・モハンダス氏ならびにパートナーのブライアン・アンドリュー氏を招き、今年3月に同グループが公表した報告書「Asia Power Trends」をもとに、アジア地域における政治的・経済的トレンドについて説明を聞くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 70-40-20

国際情勢は不確実性の時代に突入しているが、その前提として「70年間」「40年間」「20年間」の3つの異なる時代の理解が必要である。

まず、冷戦が始まって以降の70年間、日本を含むアジア諸国は米国の経済的援助や同盟関係の枠組みのなかで特筆すべき発展を遂げた。中国もこの枠組みから利益を享受していた。しかし、いまこの枠組みは二つの試練に晒されている。一つは、枠組みを修正しようとする中国の台頭であり、もう一つは、米国自身がこの枠組みに関与し続けるべきか否か疑問を示し始めていることである。

次に、40年間とは、1970年代、80年代初めから米国が中国との関係を構築してきた期間を表す。しかし、いまやこの関係は不確実な競争に陥っており、この間に築き上げられた中国との良好な関係は終わりを迎えている。現在、対中国政策について再考の必要があることについては共和党と民主党との間で合意している状態である。

そして、この20年間、米国は能力を超えて中東やアジアに進出し、何ら利益を得ることなく、むしろ多くの犠牲を払うなど、特筆すべき“大回り”をしてきた。

しかし、この70、40、20という時代区分は役割を終え、いま、世界は新たな不確実性の時代に入っている。

■ 企業の関心

米国や日本の企業から現在の国際情勢について聞かれるが、興味深いのは、彼らの関心は中国の台頭についてではなく、今後、米国で何が起きるかにあることである。すなわち、第一の懸念は、米国はアジアにおける安定的な役割を果たし続けるかということであり、第二の懸念は、この不確実性はいつまで続くかということである。

現状、不確実性はあるものの、現実には米国は日本を含めたアジア地域への関心を失ってはいない。なぜなら、トランプ大統領は昨年中国に対して最も多くツイッターで発信している。もっとも、米国内の対中国政策は根本的に変化しており、たとえ次回の大統領選挙において民主党政権が誕生したとしても対中政策を緩めることはないだろう。

また、今後、米中間の対立が激化するにつれ、経済的な環境が悪化することは間違いない。この対立により、中国からの製造拠点の移転は一層加速するだろう。

■ 日米関係

米中間の対立の激化は日米間のより強固な協力を導くことになるが、トランプ大統領の対日観は経済・安全保障両面において日本が米国から一方的に利益を得ており不公平であるという80年代の議論をベースにするものであり、また、現在の米中対立により日本は利益を得ているとも考えている。

安倍首相は、いまのところ日米間の交渉を先延ばしすることに成功しているが、7月の参議院議員選挙後にトランプ大統領がどのような行動に移すかに引き続き注意しなければならないだろう。

【米国事務所】

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