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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2019年8月1日 No.3418 「高齢者の自立と日本経済」 -21世紀政策研究所がセミナー開催

21世紀政策研究所(飯島彰己所長)は7月9日、東京・大手町の経団連会館でセミナー「高齢者の自立と日本経済」(研究主幹=樋口範雄武蔵野大学法学部特任教授)を開催し、樋口主幹らが高齢化問題について、法学、経済学、医学の観点から講演を行った。

■ 超高齢社会をどう生きるか―法律学の視点から
(樋口範雄研究主幹・武蔵野大学法学部特任教授)

現在、高齢者との共生がうたわれており、高齢者の認知症が大きな問題であるとの認識はできつつある。しかし、わが国の法および法律家も、これらに十分に対処することができていない。そこで、高齢者法の分野では、(1)事前のプランニング(2)高齢者それぞれの状況に応じた個別の対応(3)高齢者の権利や行動の支援――が重要とされる。特に、医療・介護関係でも財産関係でも、問題が生じる前、認知機能が低下する前に、事前のプランニングをしておくことが重要である。

わが国では、現状の制度でも対処は可能であるが、実情を踏まえると、上記(1)~(3)を後押しできるような法的な仕組みづくり、例えば、事前のプランニングの義務づけ、その補助を行う専門家の創出、高齢者相談所の設置等が必要であり、法律家も、世界のモデルとなるような高齢者法の世界を構想すべきである。

■ 金融ジェロントロジーの展望
(駒村康平研究副主幹・慶應義塾大学経済学部教授)

金融ジェロントロジー(老年学)は、老年学、医学、脳神経科学の蓄積を、経済や法律に応用しようとするものである。これまで、わが国の社会においては、構成員として合理的な意思決定ができる人が想定され、逆に判断能力のない人は成年後見で対応していた。しかし、高齢化社会においては、認知機能が十全ではないが成年後見の対象でもない人が増加する。そして、加齢により、資産管理の能力が低下するなど、その能力や行動傾向にさまざまな影響が出る。

他方、今後、金融資産についても高齢者が保有する割合が高くなるため、投資の不活性化が進むことになる。そのような事態に向け、金融ジェロントロジーを用いて、高齢者の心身と経済行動を理解したうえで、サービスや商品開発を行うことが重要である。このように、判断能力が不十分な人が増加することを踏まえて、社会経済のルールを見直す必要がある。

■ 超高齢社会を見据えた未来医療予想図―地域コミュニティのリ・デザイン
(飯島勝矢研究委員・東京大学高齢社会総合研究機構教授)

一定以上の年齢になると、認知機能が落ちている場合が多く、また、健康寿命と平均寿命の差である約10年を縮めるのも、簡単ではない。そこで地域包括ケアが重要になるが、そこでは、健康づくり、生活支援、在宅医療といった施策が一連のシステムになっていることが重要である。

予防として、現在では、虚弱のことをフレイルと呼び、フレイル予防が厚生労働省の施策の中心に位置づけられている。そこで実際に行っている活動では、些細な衰えを、高齢者であるフレイルサポーターとともに高齢者同士でチェックすることで、本人の動機づけを行っている。そして、運動習慣だけの人は、文化的活動や地域活動等の人とのつながりがある人よりも、約3倍フレイルリスクが高い。本人への動機づけをどう行うか、人とのつながりがしやすい街づくりをいかに継続して行っていくかが課題である。

<質疑応答>

講演終了後は、参加者との間で質疑応答が行われた。会場からは、講演内容をさらに具体的に掘り下げたものなど多数の質問があり、活発な意見交換がなされた。

【21世紀政策研究所】

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