Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年10月22日 No.3472  日英包括的経済連携協定の大筋合意について聴く -ヨーロッパ地域委員会企画部会

経団連のヨーロッパ地域委員会企画部会(清水章部会長)は9月25日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。同月11日に日英包括的経済連携協定(日英EPA)が大筋合意に達したことを受け、外務省経済局の二瓶大輔国際経済課長、経済産業省通商政策局の福永佳史経済連携課長から、日英EPAの大筋合意内容や最近の日EU・英EU関係および最近の投資関連協定をめぐる動向全般について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 外務省・二瓶国際経済課長

日英EPAは6月9日の交渉開始後、3カ月という異例のスピードで大筋合意に至った。今般の大筋合意の意義は、(1)日系企業のビジネスの継続性の確保(2)新型コロナ下で保護主義が台頭するなか、日本が自由貿易推進のリーダーであることを国際社会に発信すること(3)Brexit後の日英関係深化のための重要な基盤となること――の3点である。

大筋合意された日英EPAでは、日EU・EPAの関税撤廃期間をキャッチアップし、多くの品目で日EU・EPAで適用されている関税率と同一のものを日英間でも適用するほか、自動車部品や鉄道車両など一部の鉱工業品で日EU・EPAを上回る自由化を達成した。農産品においても、英国からの輸入について新たな関税譲許枠を設けず、日EU・EPAの内容を維持した。ルール分野では、原産地規則について拡張累積が認められたほか、ジェンダーや競争政策における消費者保護について、新たな規定が追加された。

日英EPAは、英国にとって、Brexit後、主要国と初めて署名するEPAとなる見込みであり、英国はこれを一つの成果としてアピールし、他国との交渉も進めたい考えである。英国では1000以上の日本企業が拠点を構え、日英のみならず英EU間でも密接なサプライチェーンを構築しているため、英EU間の協定締結は重要だが、英EU交渉の見通しは依然として不透明であり、引き続き注視する必要がある。

■ 経産省・福永経済連携課長

鉱工業品については、100%の関税撤廃が実現されたほか、EU産品の拡張累積を認める規定を導入し、日英EUの三極にまたがるサプライチェーンの継続に資する内容となった。電子商取引については、情報の越境移転制限、アルゴリズムを含むソースコード開示要求、データローカライゼーション要求、暗号情報の開示要求――の禁止等が導入され、環太平洋パートナーシップ協定に関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)や日米デジタル貿易協定並みの高いレベルの内容となった。知的財産についても、効果的に保護し、利用の促進を図るべく、日EU・EPAプラスの規定が盛り込まれた。日EU・EPAで記載されなかった投資家対国家の紛争処理(ISDS)・投資保護は、将来、見直しの協議をすることで合意した。

日本政府は、2020年までに100の国・地域を対象に投資関連協定を発効することを目標としており、現在、交渉中の協定が発効すると94カ国・地域をカバーする。産業界からは、投資関連協定未締結の国が多く、市場も大きいアフリカや中南米諸国、特に南アフリカとブラジルとの締結の要望が強い。両国は、投資家保護を目的とするISDS導入に消極的であるなど、日本との違いも少なくないが、両国との投資関連協定のあるべき内容等について、産業界の意見を聴きながら検討する必要がある。また、今後、投資関連協定の実効性を高める取り組みや日本企業による利活用の促進も検討課題となる。

【国際経済本部】