Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年11月19日 No.3476  情報教育とデジタル教科書をめぐる動向について聴く -教育・大学改革推進委員会

経団連は11月2日、教育・大学改革推進委員会(渡邉光一郎委員長、小路明善委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。情報処理学会情報入試委員会の筧捷彦委員長から、同学会の情報教育への取り組みについて、また信州大学の東原義訓名誉教授から、デジタル教科書の現状と今後のあり方について、それぞれ説明を聴き意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ 情報教育 情報処理学会の取り組み(筧委員長)

2003年度から高校に「情報科」が新設されたのを機に、情報処理学会では、情報教育を高校教育のなかに根付かせることで国民のICT水準向上を図る活動を始めた。05年には提言を公表し、06年以降はシンポジウムを毎年開催している。こうした取り組みもあり、22年度から「情報Ⅰ」がすべての高校生の必修科目となったが、いくつもの県において、情報科の専任教員が採用されず、他教科の教員が担当せざるを得ないなど、情報教育の指導体制が整っていないという課題がある。

また、大学入試への「情報」試験導入を目指して12年に発足した「情報入試研究会」の活動の上に、同学会は16年に「情報入試委員会」を設け、16~18年に文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業への参画、18年には大学入試センターの情報科目問題公募への協力等を行ってきた。

先日、同センターから、25年度からの大学入学共通テストに「情報」を組み入れる案が示されたが、予断を許さない。大学入学共通テストへの「情報」の導入に向けて、ぜひ経団連も協力してほしい。

■ デジタル教科書の現状と今後のあり方(東原名誉教授)

デジタル教科書は19年度から正規の教科書として使用できるようになったが、(1)動画等のリッチコンテンツは範囲外とされている(2)一般のデジタル教材とデジタル教科書とを一体的に活用する仕組みが構築されていない(3)デジタル教科書の使用は各教科等の授業時数の2分の1未満に制限されている――などの課題がある。

文科省の「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」では、24年度からの小学校における改訂教科書の使用開始を機にデジタル教科書を本格導入することを目指して、検討が行われている。特に、デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする現行基準の見直しについては、萩生田文科相の指示もあり、年内を目途に一定の方向性が示されるであろう。また別途、デジタル教科書とデジタル教材との連携を図るための学習指導要領コードの設定も進められている。

教育の情報化を図るには、GIGAスクール構想の実現だけでなく、デジタル教科書の普及も欠かせない。このためには、デジタル教科書を無償給与の対象とすること等が求められる。

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会合ではこのほか、「Society 5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第二次提言(案)」を審議し、了承した。

【SDGs本部】