Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月3日 No.3478  SDGs推進に向けた社会的インパクト評価の現状と課題 -企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース

経団連は11月13日、企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース(関正雄座長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。

SDGs(持続可能な開発目標)の採択から5年が過ぎ、目標達成に向けた取り組みの進捗を示すインパクト評価がますます重要になっているものの、評価手法が確立していないなか、各社は試行錯誤しているのが現状となっている。このため、同タスクフォースでは、SDGsに資する各社の取り組み事例について類型別にヒアリングを重ねるとともに、有識者と意見交換し、課題や改善策をまとめた報告書を作成予定である。

第1回となる同会合では、日本総合研究所の足達英一郎理事から、サステナビリティの評価に関する潮流について説明を聴くとともに、「中期経営計画に基づくマテリアリティ」を対象にSDGsと自社指標により数値目標を設定し、分析・評価・報告を行っている帝人と住友化学の取り組みをヒアリングした。

また、その後の意見交換では、環境課題においてはCO2排出量を数値化し評価することが可能だが、社会課題に関してはKPIの設定が難しいため、企業ストーリーやパーパスを明確化することが重要であるとの意見が示された。

足達氏の説明の概要は次のとおり。

■ インパクト評価をめぐる新たな潮流

インパクト評価をめぐる新たな潮流が2つある。

1つは、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)が提唱する企業の気候変動関連情報に関する「機会とリスクの貨幣換算」である。定量的に測定でき、気候変動に関し、企業が創出するインパクト測定に用いやすい手法である。2つ目は、EUが主導する「持続可能性に関するタクソノミー(分類体系)」である。主に気候変動緩和に貢献する「グリーン」経済活動等を定義する手法である。タクソノミーのリストにあればプラスのインパクトを主張でき、国が政策誘導しやすいという側面もある。

他方、GIIN(グローバル・インパクト・インベストメント・ネットワーク)が6月に公表した調査結果によれば、投資家に最も活用されているインパクトの測定と管理のフレームワークは、SDGsの指標に基づくロジックモデルであるという。前述の2つに比べ、定量的に測定しにくい社会側面の評価に適しているといえる。企業は今後、これら3つの手法をマテリアリティに応じて使い分けることが重要である。

いずれにせよ、精緻なインパクト評価の手法は、(1)財・サービスの効用をすべてインパクトとみなしてよいのか(2)私益へのインパクトと公益へのインパクト(外部不経済の軽減、外部経済の創出)を峻別できるのか(3)プラスのインパクトとマイナスのインパクトをどう統合するのか(4)特定のインプットと最終的なインパクトの関係を1対1で関係付けられるのか――などの課題を残しており、現状では完全に確立したものにはなってはいない。

【SDGs本部】