Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2020年12月3日 No.3478  脱炭素社会実現への貢献~水素還元製鉄の実現に向けて -〈連載〉わが社のチャレンジ・ゼロ/日本製鉄

Challenge Zero

日本製鉄は、気候変動問題に対して、製鉄プロセスで発生するCO2を抜本的に削減する「エコプロセス」に加え、当社の省エネ技術を途上国に移転・普及させる「エコソリューション」、高機能鋼材の開発・提供により最終製品段階で省エネ性能を発揮する「エコプロダクツ®」、さらにゼロカーボン・スチールも視野に入れた「革新的技術開発」という4つの柱により、地球規模での幅広い貢献に全力を挙げている。とりわけ、脱炭素社会に向けては、イノベーションが重要であるとの認識のもと、次に記すさまざまな革新的技術開発にチャレンジしている。

■ 水素還元製鉄の実現に向けて

鉄鋼業が排出するCO2の約7割は、酸化鉄である鉄鉱石から酸素を取り除く還元プロセスである高炉で発生するが、高炉での炭素による還元の一部を水素による還元に置き換えることでCO2排出量を10%削減し、またCO2分離回収で20%削減する国家プロジェクト「COURSE50」に取り組んでいる。当面は、石炭を用いた高炉法が最も効率的・経済的であり、こうしたトランジション技術の開発も重要であると考えている。

さらに、製造プロセスにおいてゼロエミッションを実現する100%水素還元製鉄の開発についても国家プロジェクトとして基礎研究に取り組み始めたところである。ただし、水素による鉄鉱石の還元が吸熱反応であるため、外部からの熱の供給や、水素の燃焼特性を考慮して大量の水素系ガスを反応炉に安定供給する技術などが必要であり、また、カーボンフリー水素の安価、安定、大量供給も重要な要件となる。極めて高いハードルが想定されるが、官民連携し積極果敢に推進していく。

■ エコプロダクツの開発・普及

日本製鉄グループの製品は、優れた技術力に裏付けされた高い機能性、信頼性により、エネルギー、輸送・建設機械、暮らしなどの分野で幅広く採用されている。これらの製品は、設備の効率化や軽量化、長寿命化を通じて、省資源・省エネルギー・CO2排出量削減を実現して環境負荷低減に貢献している。例えば、高強度鋼材などの先進材料・利用加工ソリューション技術を用いた「NSafe®―AutoConcept」やエネルギー効率を改善する高効率無方向性電磁鋼板がある。これらのエコプロダクツ®は、性能がさらに伸びていく可能性を秘めており、われわれはさまざまな研究開発にチャレンジすることで、ライフサイクルで考えたときにCO2排出量が最小となるような製品・サービスを提供していく。

■ 国土強靱化ソリューション

気候変動への適応に向けた国土強靱化ソリューションの提供にも取り組んでいる。日本製鉄グループは、国土強靱化に資する技術・商品メニューの拡充を図るとともに、国、地方公共団体等の施主や設計コンサル等に対する提案活動を実施。地震、津波、豪雨・台風等の自然災害リスクに適応した当社グループの技術・商品の採用が進むなど、着実に成果を挙げてきている。

このほかにも、炭酸ジメチル合成技術やブルーカーボンといったCCUに関する研究開発、廃プラスチック再資源化の効率性向上等にも取り組んでいる。今後も2050年カーボンニュートラルという政府方針も念頭に、ゼロカーボン・スチールの実現に向け、積極果敢に挑戦していく。

連載「わが社のチャレンジ・ゼロ」はこちら