Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月1日 No.3481  外国人材受け入れをめぐる入管法政策・労働法政策を聴く -産業競争力強化委員会外国人政策部会

経団連は12月3日、産業競争力強化委員会(進藤孝生委員長、岡藤正広委員長)の外国人政策部会をオンラインで開催し、佐賀大学経済学部の早川智津子教授から、外国人材受け入れに関するわが国の制度と課題について聴いた。概要は次のとおり。

■ わが国の入管法・労働法政策

外国人労働政策に関する法領域は入管法(出入国管理及び難民認定法)と労働法に分類できる。入管法は外国人の受け入れを認めるか否かの「選択」の理念、労働法は入ってきた外国人の「統合」をいかに図るかという理念を担っており、両法政策の調和・調整が不可欠である。

入管法政策については、日本は一括して在留資格制度のもと外国人の入国や滞在を管理しており、その他の制度はあまり充実していない。例えば米国では、まず国内労働市場への影響を評価したうえで、個々の外国人労働者の受け入れの可否を決定する労働市場テストがある。

次に労働法政策について、日本では、原則として外国人にも日本の労働法令を適用する消極的平等規制、国籍を理由とした労働条件差別を禁じる積極的平等規制(労働基準法第3条)が設けられている。さらに、日本人と外国人の実質的平等を確保するための保護規制も一部存在する。こうした外国人労働者の受け入れ環境の一層の整備に向けて、厚生労働省の告示である「外国人雇用管理指針」については、法律に格上げすべきと考えている。

■ 特定技能制度の課題

2018年改正入管法で導入された特定技能制度によって、14業種において、試験に合格する等により、まずは単身で5年間の在留が認められることとなった。制度導入後5年で34.5万人の利用を予定していたが、20年9月時点で9000人弱とあまり進んでいない。

同制度のもと入国した外国人労働者は、雇用主と特定技能雇用契約を締結する。ここでは労働関係法令との適合性、日本人と同等の所定労働時間・報酬が求められ、差別禁止等も規定されている。また、各種法令を遵守していること、過去1年以内に非自発的失業がなかったことなどの条件が設けられている。

同制度の今後の課題として、(1)単純労働者や移民受け入れに関する議論の整理(2)対象業種の選定プロセスの透明化(3)制度を活用して入国した新規労働者と既存労働者の競合への対応(4)省庁ごとに異なる雇用条件や提出書類の整理――が挙げられる。建設分野では、すでに外国人労働者の受け入れに先立って国内での求人実施の有無を確認する仕組みや、外国人労働者一人ひとりの就業実績や資格を登録する「建設キャリアアップシステム」を導入しており、今後の制度設計にあたって参考になると考えている。

【産業政策本部】