Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月7日 No.3482  日本政府のASEANに対する取り組みを聴く -アジア・大洋州地域委員会

説明する小林氏

経団連は12月10日、アジア・大洋州地域委員会(伊藤雅俊委員長、原典之委員長)をオンラインで開催し、外務省アジア大洋州局南部アジア部の小林賢一部長から、ASEAN地域に対する日本政府の取り組みや今後の日ASEAN関係の展望等について、説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 多様な背景を有するASEAN諸国

ASEANは、2019年時点で、世界の約8.6%にあたる約6.6億人の人口を擁し、ASEAN全体の貿易額が世界経済の約7.4%を占める約2.8兆ドルに達するなど、世界経済において重要な役割を果たしている。今後も人口が増加し、市場の拡大が見込まれる地域である。ASEANを特徴付けるのは域内各国の多様性である。例えば、人口は、域内最大のインドネシアが2億7063万人、同最小のブルネイは43万人、1人当たり名目GDPはシンガポールが6万5233ドルと域内最大かつ日本より高い水準にある一方で、ミャンマーは1408ドルと差が大きい。

■ 急速に変化する日ASEAN関係

第二次大戦後のわが国とASEANとの経済関係は、1960年代の政府開発援助(ODA)供与が一つの起点となった。日本の経済成長に呼応するかたちで、80年代にかけて対ASEANのODA支出も順調に拡大し、90年代には同地域への供与額は主要援助国中、最大となった。その後は、毎年約30億ドルの水準で推移している。

一方、近年、わが国とASEANの関係は、援助・被援助国の関係から貿易・投資のパートナー国としての関係へと進化してきている。日本からの直接投資残高は2001年からの約20年間で、4兆円から27兆円へと拡大、貿易額も5兆円から23兆円へ増加した。この背景として、ASEANの著しい経済成長が挙げられる。例えば、域内最大の名目GDPを誇るインドネシアは、00年代から急速な経済成長を遂げ、政府は、45年までに世界の5大経済大国入りする目標を掲げている。

日ASEAN間の人的な往来も活発化しており、12年以降、ASEAN諸国全体からの訪日客は中国よりも多い。さらに、ASEANにおける日系企業の拠点数は、5年の6000社からいまや1万3000社へと伸長し、観光、ビジネスなど多様な面での交流が増加している。

■ わが国にとってのASEANの重要性

成長著しいASEANは、広く海洋に面し、シーレーンの要衝に位置しており、ASEAN+3、東アジア首脳会議(EAS)の枠組みを有するなど、当該地域協力で中心的な役割を果たしている。また、ASEANの平和と繁栄は、日本を含む東アジア地域全体の平和と繁栄に深く結び付いている。

菅義偉首相は、就任後初の外遊先として10月にベトナムならびにインドネシアを訪問し、インド太平洋国家として地域の発展に取り組むことを宣言した。また、11月に開催された日ASEAN首脳会議では、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての日ASEAN首脳会議共同声明」を発出した。これは、わが国の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想と共通性を有するAOIPを支持し、積極的な協力を行うことを表明するものであり、FOIPを推進していくうえでの一つの成果であった。また、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ASEANからの要請によりわが国が「ASEAN感染症対策センター」の設立・運営を全面的に支援しており、今後も継続的に取り組んでいくとした。

わが国とASEANの関係は、対等な経済パートナー国としての関係への構造的な進化に加え、民間レベルの人的交流などさまざまな面での関係が深化しており、心と心の触れ合う関係を構築しながら、今後も交流を深めていきたい。

【国際協力本部】