Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月7日 No.3482  ドイツのインド太平洋戦略について聴く -ヨーロッパ地域委員会企画部会

ヴェルター公使

経団連のヨーロッパ地域委員会企画部会(清水章部会長)は12月9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。ドイツが「インド太平洋ガイドライン」を公表したことを受け、ドイツ大使館経済部長のズザンネ・ヴェルター公使から、同ガイドラインの内容について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ ガイドライン策定の背景

ドイツのインド太平洋ガイドラインには、同地域に関するドイツ外交の基本的方向性が包括的に示され、経済面ではルールに基づく国際経済秩序の支持が戦略的な政策目標に掲げられている。策定の背景には、一国のみに依存する経済体制への危機感がある。中国は、ドイツにとって最大の貿易相手国であり、全貿易額の約50%を占める(2019年)。今後も重要なパートナーであることには変わりないが、米中間の競争が激化する昨今、中国のみとの協力に偏らず、政治、経済、安全保障のバランスの観点から、インド太平洋地域に多角的なパートナーを見いだす必要がある。

■ 日独の協力強化を期待する分野

より緊密な日独協力が期待される分野の筆頭は、デジタルである。特に日本は、Society 5.0を重要な政策目標としており、インダストリー4.0を掲げるドイツと親和性が高い。

特に、デジタルに関する規格の策定や技術開発にあたっては、日独がイニシアティブを発揮し、個人情報の適切な保護と人間中心的なアプローチの重要性等に関する価値観を適切に反映すべきである。

また、第三国市場、特にアジア地域のインフラ市場は大きく、その投資額は30年まで毎年1.7兆ドル規模で継続する見込みであり、日独協力の素地がある。中国が一帯一路を推進するなか、日独が連携してアジア地域でのプレゼンスを高めることは戦略的にも重要性が高い。

19年には、日EUで連携してインフラ事業を進めるべく、「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」が締結されている。アジアをはじめ他の地域における日独企業のインフラ事業が、同パートナーシップのもと実施されることを期待する。

さらに、環境問題への対応は、ドイツ政府・企業にとっても優先順位の高い課題であり、菅政権も50年までにカーボンニュートラル達成を目指すと表明している。ASEAN地域においては、生物多様性の保全と都市化がもたらす課題への対処等が不可欠であり、例えば再エネ分野は先進的な技術を有する日独間の協力の種となり得る。日独が連携し、世界的な課題の解決に貢献することを期待する。

【国際経済本部】