Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月14日 No.3483  香港は引き続き地域経済に大きな役割を果たす -高島ジェトロ香港事務所長から聴く

経団連は12月18日、日本貿易振興機構(ジェトロ)の高島大浩香港事務所長による説明会をオンラインで開催し、最近の香港情勢や在香港日系企業の現状等について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

■ 中国化が進む香港

香港のデモについて、すでに暴力的な破壊を伴う抗議活動は収束しているものの、デモの背景となった一国二制度の行方、拡大する貧富の格差といった社会不安に引き続き目を向ける必要があろう。

中国による香港統治強化の一環で制定され、2020年6月に施行された香港国家安全維持法は、外国企業や外国人も処罰対象であること、ミニ憲法ともいわれる香港基本法を凌ぐ法的効力を有することなどが懸念される。ただ、日系企業にとって、ちまたでいわれているほど危機感が強いわけではなく、同法が経済活動に影響を与え得るのか運用状況をしばらく注視していく姿勢が示されている。加えて、米国による香港自治法に基づく牽制やバイデン新政権の発足等の動きのなかで、米中対立の香港への影響も警戒していく必要がある。

■ コロナ禍における日系企業の状況

新型コロナウイルスの感染については、20年11月下旬から第四波感染に見舞われているが、いずれの感染期も日本と比べて爆発的な状況にはない。香港政府はこれまで、公務員の在宅勤務指令、集会規制、レストランの営業時間の短縮などを通じて抑制策を講じるとともに、矢継ぎ早に大規模な人件費補助を含めた経済対策を講じてきた。ただ、感染の長期化による息切れ感もある。

20年10月の日系企業向けのアンケートでは、業績悪化に影響を与えた要因として、「米中対立」「デモ・抗議活動」などを抑えて、「新型コロナウイルス」が最も多い。とりわけ、深圳を含めた華南との出入境制限に伴う影響が大きい。20年の実質GDP成長率はマイナス6.1%と予測されるが、精密機械・電気・電子部品など華南に拠点を有する製造業や中国向けの販売を中心に日系企業の業績は回復の兆しをみせている。また、コロナ禍において、人員や拠点数の縮小は一部見受けられるものの、香港から撤退する動きは景気変動の範囲内である。

■ 香港の将来性

日系企業は、今後の香港の優位性として、「簡素な税制・低税率」「中国本土へのアクセスが容易であること」の2点を以前と変わらずに挙げている。昨今の環境変化にあっても、諸外国からの中国投資のゲートウエーとしての香港の役割は、廃れることはないだろう。さらに、広東・香港・マカオ大湾区構想(GBA)では、橋梁などのハードのつながりにとどまらず、金融等の高度人材の香港から華南地域への流動化を進めるなど、ソフト面でも地域の一体化を図り、市場の拡大を図る動きにも着目すべきだろう。

【国際協力本部】