Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年1月14日 No.3483  ハイレベル・オンライン・シンポジウム「Society 5.0実現に向けた企業と投資家の長期戦略」を開催〈下〉

経団連は12月9日、「Society 5.0実現に向けた企業と投資家の長期戦略」をテーマに、ハイレベル・シンポジウムをオンラインで開催した。前号に続き、各登壇者の講演の概要は次のとおり。

左から関山氏、山本氏、時田氏

■ 関山和秀 Spiber社長

Spiberは、伸縮性があり強靱な「クモの糸」を人工的に生成する大学発ベンチャーである。起業した背景には、気候変動、エネルギー、食糧問題など地球規模の課題を解決し、人々の幸せ(well-being)に貢献したいという思いがあり、クモの糸はその解決策の一つになると考えた。

クモの糸は植物由来のタンパク質素材であるため、例えば、カシミヤで作られた製品の約半分を人工合成クモ糸に代替すれば、世界の温室効果ガスを0.16%削減できる。同様に、約1万トンのフリースを人工合成クモ糸を用いた製品にすれば、海洋マイクロプラスチックで0.1%削減できる。

今後、タイや米国等でも工場を稼働する予定など、海外での生産拡大も進めている。引き続き、世界の課題解決に向けて取り組みを進めたい。

■ 時田隆仁 富士通社長

富士通では、「パーパスドリブン」を掲げ、2020年、自社のパーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界を持続可能にしていくこと」と定めた。また「データドリブン」を掲げ、国内外のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。特に、社会のさまざまなデータから街全体を仮想空間上に再現する「デジタルツイン」技術を活用し、交通渋滞や環境汚染などのあらゆる社会課題に対してよりよい解決方法を提供できるよう取り組んでいる。

さらに、自社が有していた従来の制度やカルチャーの変革も図り、社員が自身の能力を発揮できる最適な働き方の導入などにもチャレンジしている。

「パーパスドリブン」と「データドリブン」の両輪の駆動による、サステナブルで豊かな社会の実現こそが、当社が目指す姿である。

■ 山本康正 DNX Venturesインダストリーパートナー

コロナ禍のさなか、GAFAM(米国主要IT企業5社)の合計時価総額が、東証1部上場企業の合計時価総額を上回った。この一因に、投資家が「データが次の石油」ととらえていることがある。

またスタートアップへの投資についても日本は後塵を拝しており、米国・中国がユニコーン200社超、VCファンド組成額は5兆円超であるのに対して、日本は5社、約2300億円にとどまる。

そこで日本企業には、社会変革を引き起こす技術やビジネスモデルを的確に予測し、企業活動の方向性を取りまとめた「鼓舞するビジョン」が不可欠である。そのうえで、ITとデータサイエンスの融合、ESG(環境・社会・ガバナンス)、自社内での研究開発とスタートアップなど外部との協創(両利きの経営)等を進めることが求められる。

※ 講演は動画サイトで視聴可能
https://youtube.com/playlist?list=PLPMmkX4sPTFWrBs6xjy4nHsbHDriED4Sg

【ソーシャル・コミュニケーション本部】