Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年3月18日 No.3492  生産性を向上させる働き方改革の実現に向けた課題 -太田同志社大学教授が説明/労働法規委員会国際労働部会

経団連は2月25日、労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)をオンラインで開催し、同志社大学政策学部の太田肇教授から、「生産性を向上させる働き方改革の実現に向けての課題」と題する説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。

日本と欧米・中国企業との比較のなかで、採用・異動に関して欧米の大企業では、一部に新卒採用もあるが、中途採用の比重が大きい。新卒の場合、インターンからの採用が多い。また、大企業の多くは、空きポストができた際に会社内外に公募する「ジョブポスティング」制度を採用している。一方で、GAFAなどでは、知人の紹介からというケースもある。基本的に、本人の意思によらない異動は行われない。

人事評価に関して欧米大企業では、3ランクか5ランクとしているケースが多い。非管理職については査定で差をつけないのが基本である。プロセス評価も行うほか、“no rating”という潮流もある。中国大企業においては、競争原理、市場原理が徹底されている。

日本企業への示唆として5点指摘したい。第1に、職務主義(ジョブ型雇用)の導入については、職務がなくなった場合の処遇、同じ職務での待遇差、労働法の規制に加えて、変化の大きい時代に職務を明確に区切ることが合理的か否かに留意する必要があること。

第2に、採用・異動については、従来の学歴・面接重視やローテーション方式では専門的なキャリア形成が進みにくいことから、それを避けるために高度な専門職集団を形成する人事管理を行う必要があること。

第3に、人に仕事を当てはめていく「自営型」の働き方を導入することで、会社の内外にネットワークを広げていくこと。

第4に、内部労働市場を社内FAや役職立候補制のさらなる導入により活性化していくこと。

第5に、新たな経験を重ねてきたという意味で欧米諸国では高く評価されている「Uターン採用」を日本でも拡大していくことが望まれる。

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意見交換では、太田氏が、多様な人材を受け入れる側のマインドの重要性や、業種別の違いよりも国別の違いの方が大きいことなどを指摘した。

【労働法制本部】