Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年3月18日 No.3492  多様な価値観を包摂する、及第点での合意を目指す風土づくり -「第21回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催/篠原副会長が講演

経団連は2月26日、会員企業各社の女性役員のさらなる活躍を応援する「経団連女性エグゼクティブ・ネットワーク」の活動の一環として、篠原弘道副会長(日本電信電話会長)をメンターに迎え、東京・大手町の経団連会館で「第21回リーダーシップ・メンター・プログラム」を開催した。36名の女性役員が出席し、講演を聴くとともに意見交換を行った。講演の要旨は次のとおり。

■ コロナ禍で感じたこと

近年、科学技術の発展による効率や利便性の向上だけでは、豊かさを感じられなくなってきた。人がいきいきと過ごすことのできる「持続的well-being」の達成を目指すことが重要になってくる。

コロナ禍のもとで本格化した新しい働き方により、私たちは時間・場所・距離から解放された一方で、フェイクニュースやリアルのつながりの減少等により、不安感や疎外感、孤独感も増した。また、今後起こり得る危機に備え、社会経済構造を強靱化する必要がある。Inclusive と No one left behind の考え方で、多様な価値観を受容しつつ、「同意」ではなく「合意」、「満点」ではなく「及第点」を目指す柔軟な考え方で開発を進めたり、データ活用を推進したりすることが必要である。そのためには、単に技術を使いこなすのではなく、正しい情報を選び取ることのできるような情報リテラシーの向上、バーチャルでの自発的な個人間のつながりの強化、日本人に強い現状維持バイアスからの脱出や感性の向上、社会との対話が求められる。

■ 会社生活の失敗から学んだこと

何事も失敗から学んだ。1990年代以降のマルチメディア開発時には、通信速度の向上という「手段」を目的化した、事業者目線での開発にこだわったことが原因で多くの失敗をした。今後は、これまでの「技術優位」や「競争優位」という発想から、そもそも競争の土俵の定義からリードする「価値優位」という発想に転換し、土俵そのものを勝負することが求められる。例えば、5Gも、どのような社会課題が解決できるのかといった社会・経営・政策等の最上位の目的の観点から議論したうえで、どう社会実装するかを考えるべきだ。

■ 経営層が大切にすべきこと

異なる専門分野・言葉・時間軸・文化の人がいるなかで「長」としての役割を果たすためには、決断・説明・結果に責任を持つ必要がある。知識面では信頼できる「知恵袋」を探し、判断面では価値観が違うリトマス試験紙をあえて近くに置くとよい。心がけとしては、決断から逃げないこと、人を動かすのではなく「人が動くように働きかける」こと、日々の仕事でも違う価値観を享受することなどが必要だ。また、組織力向上のためには、挑戦する風土の醸成や共感を大切にし、多様性の維持・拡大、他組織との連携促進や自律精神の涵養も求められる。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】