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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年4月22日 No.3497 ASEAN諸国の対外認識~アジア学生調査の知見

園田氏

経団連は4月6日、オンライン会合を開催し、東京大学東洋文化研究所の園田茂人教授から、「ASEAN諸国の対外認識~アジア学生調査(2008―2019)の知見から」と題して説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ASEAN加盟国同士の社会的結合は必ずしも強くないが、地域統合には肯定的

2008年から3回にわたり、アジアの学生を対象に、日本を含むアジアの主要国などに対する認識を調査してきた。調査の結果、それぞれの国の学生の対外認識や他国との社会結合について何点か興味深い特徴が読み取れる(注)

アジア各国の学生の日本に対する評価は総じて高い。中国に対しては、ベトナムおよびフィリピンからの評価は低く、両国が中国との間で抱えている安全保障面での課題が影響したと思われる。他方、それ以外のASEAN各国の学生は中国を好意的にとらえていることがわかる。

米国については、マレーシア、インドネシアからの評価が相対的に低い傾向にあった。これは、米国のイスラムへの対応が影響していると考えられる。興味深いのは、同じイスラム圏に属するマレーシアとインドネシアは、互いを好意的に評価していないことであるが、実際には、互いの国に友人を多く有しており、印象と実際の社会的結合の度合いは異なる点に留意しなければならない。

ASEAN加盟国同士の対外認識をみると、それぞれの評価は高くもなく、低くもない。また、ASEAN加盟国同士の社会結合は必ずしも強くないものの、ASEANの地域統合に対しては肯定的な感覚を有している。これらのことから、ASEAN域内で摩擦が生じないための政治的ツールとしてASEANを受け止めていることがわかる。ただし、例外的に、シンガポールに対する評価は、日本への評価と同程度に高い。

■ 日本のイメージの向上には日本国内におけるASEANの人々への対応が重要

ASEAN加盟国では総じて日本の大学への留学希望は多い。ただ、英米豪には及ばない。ASEANでの実質的な共通言語である英語を使用する地域への関心が高いといえる。また、日本企業への就職も関心を集めている。

フィリピンの学生の対日感情は非常に良い。一昔前までは、フィリピンに多くの日本企業が進出し、その活動が高い評価につながっていた。今日では、日本を訪れたフィリピン人が日本で受けた好印象をSNS等で発信しており、それが同国内での日本に対するイメージの向上につながっている。日本に対して良い印象を持ってもらうために、日本がASEANで何をするのかに加え、日本のなかでASEAN諸国の人々に何をするのかを検討していくことも重要である。

(注)対外認識は他国・地域を好意的にとらえているか否かを数値化。社会結合は、友人・知人の有無を数値化。

【国際協力本部】

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