Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年5月27日 No.3500  防衛省の宇宙政策について聴く -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

経団連は5月13日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合を開催し、防衛省防衛政策局戦略企画課の松本恭典課長から、同省の宇宙政策について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 宇宙空間の脅威

米国とソ連の冷戦時代には、宇宙空間は脆弱であるとの認識のもと、両国は宇宙で争わなかった。現在は、中国やロシアの活動により、宇宙空間の安定的利用に対する脅威が生じている。

中国は、2007年に衛星破壊実験を行い、最近はレーザーや電波による衛星の妨害、不審な衛星による近接行動などをしている。

ロシアは、19年11月に衛星「コスモス2542」を打ち上げ、その翌月に衛星「コスモス2543」(子衛星)を分離・放出し、20年7月に子衛星から物体を放出した。これらの衛星は、他国の衛星を攻撃する「キラー衛星」に転用されるおそれがある。

■ 米国の宇宙政策

米国は、19年3月に宇宙開発庁を発足させ、「国防宇宙アーキテクチャー」計画を進展させている。23年に30機、24年に160機程度、27年に数百機の小型衛星を打ち上げて、通信、測位、偵察、宇宙状況監視、ミサイル追尾などを行う計画である。

バイデン政権の宇宙政策はまだ発表されていない。ホワイトハウスで宇宙を担当する人選が決まれば、宇宙政策の方向性がみえてくるだろう。

■ 防衛省の宇宙政策

防衛省の目標は、陸、海、空、宇宙、サイバー、電磁波などすべての領域で、戦闘に勝つまたは負けない態勢をつくることである。宇宙を利用して他の領域を支えて、わが国が優位に立つために、次の4点に取り組んでいる。

第1は、宇宙状況把握(Space Situational Awareness、SSA)の強化である。防衛省は、23年度からSSAシステムの運用を開始し、26年度までにSSA衛星の1号機を打ち上げる予定であり、複数機の運用も検討している。

第2は、宇宙利用の促進である。商用衛星などから画像解析用のデータを取得するほか、ミサイル防衛の観点から小型衛星コンステレーションを検討している。

第3は、宇宙利用における抗たん性(※)の向上である。宇宙システムの抗たん性を強化するため、各種システムの冗長性の確保や、次世代衛星通信のあり方を検討するとともに、防衛省のサイバーセキュリティ基準を米国と同等のものに改めて、米国等との間でSSAをはじめとする各種データを交換できるようにしていく。

第4は、組織体制の強化である。20年5月に宇宙作戦隊を約20名で発足させた。21年度については、宇宙領域の指揮統制を担う「宇宙作戦群(仮称)」を約70名で発足させる予定であり、引き続き宇宙組織を拡充していく。

※ 宇宙システムの機能を継続的かつ安定的に利用できる能力

【産業技術本部】