Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月10日 No.3502  FOIP実現に向けた東南アジア大洋州地域の連結性強化の取り組み -アジア・大洋州地域委員会企画部会

廿枝氏

経団連は5月19日、アジア・大洋州地域委員会企画部会(宮地伸二部会長)をオンラインで開催し、国際協力機構(JICA)の廿枝幹雄東南アジア・大洋州部長から、「FOIP実現に向けた東南アジア大洋州地域における連結性強化の取り組み」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ FOIPとASEAN

FOIP(自由で開かれたインド太平洋)は、2つの大陸(アジアとアフリカ)と2つの大洋(太平洋とインド洋)の交わりにより生まれるダイナミズムを一体としてとらえ、国際社会の平和、安定、繁栄の促進を目指すものである。とりわけ、ASEANはFOIPの実現に向け重要な位置を占めており、ASEANが一体となって中心性を発揮していくことが、この地域の継続的な繁栄につながると考えられる。ASEANの中心性と一体性を重視しつつ、包括的かつ透明性のある方法で、ルールに基づく国際秩序の確保に向けた取り組みを推進する必要がある。

■ FOIPの実現に向けたJICAの取り組みと知日派・親日派人材の育成

FOIPの実現には3つの柱がある。第1に、「法の支配、航行の自由、自由貿易の普及・定着」である。JICAは、人々の暮らしや尊厳を守ることを目的に、各国の法整備支援や法曹人材の育成、航行の自由を確保するための港湾整備・拡張等に携わっている。また、自由貿易への取り組みとして、通関手続きの電子化や関連法の整備も実施している。第2に、「経済的繁栄の追求」である。ASEAN域内の各種のインフラや制度の整備を推進し、ASEAN共同体の統合深化を後押しするため、JICAは日本政府・企業と共にASEANによる連結性強化の取り組みを一貫して支援している。具体的には、約2兆円の陸海空の回廊連結性プロジェクトが挙げられる。また、2019年に日ASEAN技術協力協定が署名され、JICAによるASEAN共同体への技術協力も可能となった。第3は、「平和と安定の確保」である。海上法執行能力の構築支援として、沿岸警備隊や海上警察に対する船舶の供与や、海上安全にかかる人材育成を実施している。

人材育成に関連し、日本が、明治維新以降の近代化や途上国の経済発展への貢献において培った経験を伝えることを目的に、18年に「JICA開発大学院連携」を始動させた。親日派・知日派を育成し、彼らが途上国の未来と発展を支えるリーダーとなって活躍することで、各国との関係を中長期的に維持・強化したい。

■ ASEANにおけるJICAと企業の連携強化

米国のバイデン政権発足後、FOIPの重要性は一層高まっており、JICAは途上国に対して、民主主義の考え方を根付かせるための支援を粘り強く、地道に推進する。コロナ禍で途上国経済が大打撃を受け、公的債務負担能力が低下するなか、ASEANにおいてはODAと民間投資の連携が求められている。相手国にビジネス環境整備を継続して促しつつ、民間がリスクを負いきれない部分についてODAを活用し、将来の民間投資に結び付けることができるよう、企業との連携・協力を一層強化していきたい。

【国際協力本部】