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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月10日 No.3502 アジア開発銀行による新型コロナウイルス感染症危機への対応

浅川氏

経団連は5月20日、オンライン会合を開催し、アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁から、「アジア経済の見通しとADBの新型コロナウイルス感染症危機への対応」と題して説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ADBの概要

1966年設立のADBの主な役割は、融資やグラント(無償支援)、技術協力等の資金および知識の提供等を通じてアジア・太平洋地域の途上国の発展を支援することである。国籍別の国際職員数は日本が最多である。

■ 新型コロナがアジア経済に与えた影響とADBの対応

新型コロナはアジア経済にも大きな影響を与え、アジアの開発途上国・地域の実質成長率は2019年のプラス5.0%から、20年はマイナス0.2%と60年ぶりの落ち込みとなった。21年は、中国とインドの経済回復によりプラス7.3%、22年はプラス5.3%に回復する見通しであるが、名目GDPの水準がコロナ禍以前と同じレベルに戻るには数年を要するだろう。

こうした状況を受け、ADBは20年4月、(1)緊急財政支援(2)技術協力およびグラント(3)民間セクター向け支援――を含む200億ドルの支援パッケージを発表した。また、途上国がワクチンを調達できるよう、90億ドル規模の枠組み(APVAX)を構築するとともに、需給ギャップ解消のため支援するワクチンの対象を広げつつ、インド等域内の民間のワクチン製造会社に融資し、供給能力の向上につなげていきたい。

20年のADBの融資等の契約締結総額は史上最大となる総額316億ドルとなった。国別融資等はインド、フィリピン、インドネシアの順に多く、セクター別では直接、相手国政府に財政支援する「行政改革・財政支援」と「保健」分野が急増した。

■ アジア経済の持続的な成長のための5つの優先事項

今後、アジア・太平洋地域が持続可能な成長を達成するための優先事項は次の5つである。第1に、地域協力・統合のさらなる深化である。バリューチェーンや公衆衛生管理、金融などの領域において、グローバリゼーションを補完する地域協力が必要である。第2は、人的資本と社会的保護への投資である。新型コロナにより一層広がった機会の格差に対応するため、教育分野や保健システム等、人的資本への投資が重要になる。第3は、グリーンで強靱なインフラの促進である。気候変動対策はアジア・太平洋地域においても重要な課題であり、ADBとしても、気候変動ファイナンスの拡充、パリ協定への対応や、エネルギーポリシーの改訂などに取り組んでいく。第4は、デジタル化の推進である。コロナ禍で急速に実現しているが、インターネットへのアクセスにかかるコスト軽減などを通じたデジタルデバイドの解消や、サイバーセキュリティの強化が重要である。第5は、国内資金動員の強化である。コロナ禍による財政出動等により各国の債務が膨らみ、危機に陥る懸念もあることから、税収を上げていく必要がある。ADBは、今年5月に新設した「アジア・太平洋税務ハブ」を通じて、政策対話、知見の共有、協力・調整を行い、各国の国内資金動員の活発化、税収増に向けて取り組む。

【国際協力本部】

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