Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月10日 No.3502  「コーポレートガバナンス・コード」再改訂のポイント

経団連は5月21日、金融庁企画市場局の井上俊剛参事官、同企業開示課の島崎征夫課長、浜田宰企業統治改革推進管理官、東京証券取引所(東証)の青克美執行役員、林謙太郎上場部長を招き、コーポレートガバナンス・コード(コード)の再改訂に関する説明会をオンラインで開催し、600名以上が参加した。同説明会は、今年4月9日、コードならびに投資家と企業の対話ガイドラインの再改訂案が公表されたことを受け、改訂版の確定・公表に先立つもの。概要は次のとおり。

■ コード改訂案の概要(金融庁)

(1)取締役会の機能発揮

プライム市場上場会社に対しては、独立社外取締役を3分の1以上選任すべきとの記載を加える。

上場企業には、スキルマトリックス等、経営環境や事業特性等に応じた適切なかたちで各取締役の知識・経験・能力等の組み合わせの開示を求める。

(2)企業の中核人材の多様性の確保

女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標とその状況の開示を求める。

(3)サステナビリティをめぐる課題への取り組み

リスクの減少のみならず収益機会ととらえて取り組み、適切に開示すること、人的資本や知的財産への投資等についても開示すること、特にプライム市場上場会社には、気候変動に関しTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)等の枠組みに基づく開示を求める。

(4)グループガバナンスのあり方

支配株主を有するプライム市場上場会社には、独立社外取締役の過半数の選任か、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討する特別委員会の設置を求める。

その際、特別委員会は支配株主からの独立性を有する者で構成される必要がある。

■ 上場制度の見直しと今後のスケジュール(東証)

2022年4月4日付で、現行の市場区分をプライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つの市場区分に見直す予定。グロース市場には基本原則のみを、プライム市場およびスタンダード市場に対しては、補充原則までを含む全原則(前者にはより高い水準の内容を含む)を適用する。21年12月末までに、改訂版のコードに基づいたガバナンス報告書の更新が必要となる(プライム市場向けの内容については、22年4月以降の定時株主総会後、遅滞なく提出する同報告書に反映が必要)。

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なお、同再改訂案の公表と同時に実施されたパブリック・コメントに際し、経団連金融・資本市場委員会資本市場部会/建設的対話促進ワーキング・グループ名で5月7日、「コーポレートガバナンス・コード改訂案への意見」を提出。原則主義(注)に基づき形式でなく実質の確保などを求めた。

コーポレートガバナンス・コード改訂案への意見【ポイント】

総論

  1. プリンシプルベース・アプローチおよびコンプライ・オア・エクスプレインの徹底
  2. ガバナンスコードの改革が企業価値向上に与える影響についての検証
  3. 改訂後のコードの実施・運用局面におけるフォローアップ

各論

  1. プライム市場上場会社に3分の1以上の独立社外取締役を求める原則(原則4-8)の柔軟な運用、東証の「独立性基準」の柔軟性の確保・実質的な判断への見直し
  2. 多様性確保のための自主目標(補充原則2-4①)の各社の実状に応じたかたちでの策定・開示

(注)原則主義(プリンシプルベース・アプローチ)=細則主義(ルールベース・アプローチ)に対するもので、抽象的な原則について、関係者がその趣旨・精神を共有し、各自、自らの活動がその原則の趣旨・精神に照らして適切かを判断する手法

【ソーシャル・コミュニケーション本部】