Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年7月1日 No.3505  経団連企業人政治フォーラムが講演会を開催 -細谷慶應義塾大学教授が講演

経団連企業人政治フォーラム(大塚陸毅会長)は6月8日、オンラインで講演会を開催し、細谷雄一慶應義塾大学法学部教授から、「コロナ後の世界秩序」と題する講演を聴いた。概要は次のとおり。

■ 均衡が崩れた世界

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界秩序が大きく混乱し、変容している。これは世界で、(1)自然界と人類界との間のバランス(2)米中間のバランス(3)富裕層と貧困層とのバランス――の3つの均衡が崩れつつあることと関連している。世界史におけるパンデミックは、人の移動とグローバリゼーションと連動している。これまでも14世紀にはペスト、20世紀にはスペイン風邪のパンデミックにより社会経済構造が大きく変容するとともに、歴史的な変化が加速し、新しい時代の幕開けにつながった。この新しい時代を見通した国と見通せなかった国で勝者と敗者が分かれることになる。どのような世界になるかを想像し、そこから逆算して準備を進めなければならない。

今の世界の構造において最も大きな変化は米中対立である。このなかで、日本は最も重要な役割を担う立場にある。すなわち、米中の軍事衝突が勃発する危険性が高まっているといわれるなか、最も重要な拠点となるのは日本だからである。米国にとっては、日本との関係強化とともに、軍事技術の進歩が進む中国との戦争をいかにして避けるかが課題となる。

■ 新型コロナで世界はどう変わるのか

グローバル化という点では、新型コロナによりデジタル化が進む一方で、人の移動が後退している。日本は主要国のなかでデジタル化が最も遅れており、この遅れは中国や台湾との比較において、研究、教育水準などの面でアキレス腱となるであろう。もう1つ重要なのが、世界のパワーバランスの変化である。中国の力が拡大し、米中のパワーバランスが大きく変化している。そうしたなか、日本は、短期的な中国の優位性と長期的な米国の優位性という2つの異なる周期の影響を受けている。日本にとっては、中国のみに傾斜するのも、米国のみに傾斜するのも賢明ではない。

■ 日本外交に何が可能か

われわれが何十年にも及んでなじんできた国際法と国際組織が支配する世界から、力によって国際政治が動く時代を迎えている。そうしたなか、米国が日本に防衛費の増大を求めることは自明である。今後は、いわば民主主義連合の足し算で、中国・ロシアの連合に対抗できるかが世界を決める。日本の役割は、短期的には、自由民主主義諸国の結束を強化し、ルールに基づく国際秩序を維持・強化するための外交を展開することであろう。中長期的には、米中の対立を緩和するため、中国との外交を強化することが求められる。

【総務本部】

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