Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年7月29日 No.3509  2021年度宇宙開発利用推進委員会総会を開催 -井上宇宙政策担当相があいさつ/経団連の提言を建議

左から田熊部会長、井上大臣、篠原副会長、河西事務局長

経団連は7月7日、東京・大手町の経団連会館で宇宙開発利用推進委員会(柵山正樹委員長)の2021年度総会を開催した。2020年度活動報告・収支決算および2021年度活動計画・収支予算を報告、「宇宙基本計画の実行に向けた提言」案を審議・承認した後、篠原弘道副会長と田熊範孝宇宙開発利用推進委員会宇宙利用部会長が井上信治内閣府特命担当大臣(宇宙政策)に、同提言を建議した(7月15日号既報)。続いて井上大臣があいさつし、河西康之内閣府宇宙開発戦略推進事務局長が宇宙政策の重点事項について講演した。概要は次のとおり。

■ 井上大臣あいさつ

政府の宇宙開発戦略本部は6月29日、「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項」を決定した。宇宙安全保障の確保、災害対策・国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献、宇宙科学・探査による新たな知の創造、宇宙を推進力とする経済成長とイノベーションの実現、産業・科学技術基盤などの強化という方針のもとで、宇宙政策を強化していく。

経団連の「宇宙基本計画の実行に向けた提言」の内容は、重点事項にも盛り込まれている。来年度の宇宙関係予算の概算要求について、関係府省と調整したうえで、宇宙政策の強化に必要な予算の確保に取り組みたい。

安全保障や経済社会における宇宙の役割が拡大するなか、宇宙政策における官民の連携はますます重要になる。政府として、産業界が力を最大限発揮できる環境整備を進めていく。

■ 河西事務局長講演

宇宙関係予算は、令和3年度当初予算と令和2年度第3次補正予算を合わせると約4496億円となり、対前年度比で844億円(23.1%)増加した。主に宇宙開発に関する文部科学省の予算が過去最大の2124億円となり、宇宙を利用する省庁の予算も大きく増えた。

政府が6月18日に閣議決定した骨太方針2021と成長戦略実行計画には、宇宙に関する取り組みが多く記載された。成長戦略実行計画では、経済安全保障の強化の観点から重要な先端技術分野の筆頭に、宇宙が挙げられている。

「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項」に基づいて、年末の工程表改訂に向けて議論を進める。重点事項には、3つのポイントがある。

1つ目は、小型衛星コンステレーションである。相互に連携する多数の衛星で地球全体をカバーすることで、ミサイル防衛やブロードバンド通信網の提供が可能になる。日本独自の衛星コンステレーションを早急に構築するため、次世代宇宙基盤技術の開発を進めたい。

2つ目は、日米協力である。火星探査も視野に月面を持続的に探査する「アルテミス計画」において、わが国としての役割を果たす。また、火星圏からのサンプルリターンを目指すMMX(火星衛星探査計画)を24年度に確実に打ち上げる。米国との産業協力も視野に入れ、宇宙港の整備などアジアにおける宇宙ビジネスの中核拠点化を目指す。

3つ目は、地球温暖化対策である。各国がカーボンニュートラルにコミットするなか、衛星「いぶき」(GOSAT)等を活用して、温室効果ガスの排出状況を観測するシステムの構築を進める。また、宇宙太陽光発電の実現に向けて、発送電効率の向上などに取り組む。

【産業技術本部】