Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月2日 No.3512  内外経済情勢と金融財政政策 -経済財政委員会

門間氏

経団連(十倉雅和会長)は8月2日、経済財政委員会(柄澤康喜委員長、永井浩二委員長)をオンラインで開催し、みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストから、内外経済情勢と金融財政政策について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 内外経済情勢

日本の景気は、新型コロナウイルスの影響により大きく落ち込んだが、製造業は新型コロナ前の水準に概ね回復している。足元での半導体の需給逼迫がネックとなっているが、世界的な「巣ごもり需要」の増加などを背景に、V字で回復してきている。しかしながら、飲食・宿泊などのサービス業は、新型コロナの影響により極めて低い稼働状況が長期化している。

欧米の景気は、ワクチン接種の進展に伴い、大きく回復している。米国では、巨額の財政支援も背景に、今後力強く回復・成長していく見通しである。

米国では、最近、インフレ率が急上昇している。米連邦準備制度理事会(FRB)は、一時的な上昇と判断しているが、今後の金融政策に影響するため、マーケットは注視している。米国の金融政策の行方をめぐっては、8月末に予定されている米ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言が注目されている。

■ 日本の金融財政政策のあり方

日本経済は、「アベノミクス景気(2013~18年)」において、戦後最長並みの景気拡張期となったが、それでも低成長・低インフレ・低金利の状態が続いた。

低インフレ・低金利は今後も続くと考える。1990年代中盤から物価がほとんど上がっておらず、1%に達したのは、世界的な食糧価格高騰や大幅な円安があった2回だけである。こうしたなか、日本銀行の2%物価目標を変更する必要性は乏しいものの、目標の実現可能性はほぼゼロと考えられ、したがって低金利が続くと予想される。

アベノミクスのもとでの低成長の要因は、過去の景気拡張期と比較すると、設備投資は遜色ない増加率だが、GDPの半分強を占める個人消費が、賃金の伸び悩みなどを背景に非常に弱かったことにある。個人消費を増やすためには、財政政策を活用した家計所得の強化策、具体的にはセーフティーネットの充実や、リカレント教育・職業訓練などの拡充を図る必要がある。

財政政策は、財政の持続性に対する信頼を失うリスクと、財政再建を急ぎ過ぎて経済に必要以上の負荷をかけてしまうリスクとをバランスよく考えていくべきである。特定の財政再建目標を機械的に追求するのではなく、経済情勢や国内資金余剰の実態も踏まえつつ、中長期的な持続性を確保していく観点が重要である。低インフレ・低金利である限り、政府債務のコストは小さく、日本銀行も国債買い入れの安全弁として機能する。そのうえで財政の持続性をより確実にするためには、物価・金利の上昇局面に差しかかったら財政再建方針を強化する状況依存型ルールの採用などが考えられる。

【経済政策本部】