Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月2日 No.3512  日本政府主導でアジア等新興国のカーボンニュートラル達成を後押し

経団連は7月27日、資源エネルギー庁の早田豪国際資源エネルギー戦略調整官から、温室効果ガス削減に向けた国際動向、アジア等新興国のエネルギートランジションの実現に向けた日本の幅広い支援策である「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 温室効果ガス削減に向けた国際動向

パリ協定による脱炭素社会実現に向けて、2021年4月の気候サミットでは、多くの国・地域が削減目標の引き上げや手段の多様化を表明した。日本は50年カーボンニュートラル(CN)を目指し、30年度の温室効果ガスの13年度比46%削減と、50%の高みに向けて、挑戦を続けていくと宣言した。

気候変動対策が世界的に喫緊の課題となるなか、国際金融市場では化石燃料からのダイベストメントの動きが加速している。世界銀行グループおよび欧州の金融機関等は、石油や天然ガスの上流開発(採掘・開発・生産の開発段階)や石炭火力発電への融資をすでに停止しているほか、アジア開発銀行(ADB)も新しいエネルギーポリシーの草案において、ガス火力発電関連施設への支援要件の厳格化を検討している。

EUタクソノミー草案では、石炭火力発電をサステイナブルな活動から除外した。ガス火力発電の除外には踏み込まなかったものの、判断基準の厳格化が示されている。

他方、トランジションや地域特性を評価し、化石燃料の開発や火力発電へのファイナンスを継続する欧州金融機関も一部存在する。

また、欧米を中心として、発展途上国は、化石燃料の利用を越えて、再生可能エネルギーの導入のみで容易にCNを達成できる(リープフロッグ=「かえる跳び」)とする議論もある。

■ IEAネット・ゼロロードマップと政策の整合性

21年5月公表のIEAネット・ゼロロードマップを正確に理解する必要がある。同ロードマップでは、世界全体が50年ネット・ゼロを達成するために必要な400超のマイルストーンを示している。こうしたマイルストーンがすべて実現すれば、50年の化石燃料需要が大幅に減少するため、その結果、新規の石油・ガス・石炭の上流開発は不要としている。

また、同ロードマップでは、50年までにネット・ゼロを達成するための唯一の道筋はなく、クリーンエネルギートランジションには多くの不確実性が存在するとしている。この点にも留意する必要がある。

■ アジアのエネルギー転換に向けた日本の支援を世界に

IEAの公表政策シナリオ(STEPS)では、40年時点でもASEAN諸国の一次エネルギー源の約8割が化石燃料と予測する。ASEANでは、気象条件や地形的制約から、再生エネルギー(太陽光や洋上風力等)を低コストで導入できる地域は一部に限られる。したがって、アジアで増大するエネルギー需要を賄いつつ、経済成長とカーボンニュートラルを両立するためには、各国の事情を考慮し、あらゆるエネルギー源・技術を活用した、多様かつ現実的なエネルギートランジションを進めることが不可欠である。

そうしたなか、わが国は、首脳・閣僚会合等を通じて、現実的なエネルギートランジションへの支援を表明した。CNに向けて海外資金を呼び込むため、CNを宣言し、それに向けたロードマップの提示が不可欠との認識をアジア等の新興国と共有する。あわせて、わが国として、ロードマップ策定から、それに位置付けられた技術やプロジェクトに至るまで、幅広く支援していく。

こうした観点から、今年6月の日ASEANエネルギー大臣特別会合において、ファイナンス支援、人材育成等の幅広い支援策から成るAETIを発表した。同イニシアティブは、ASEAN各国からも歓迎されている。

10月には、ASEANおよび他のアジア諸国、米国、カナダ、豪州、中東諸国等に呼びかけ、「アジアグリーン成長パートナーシップ閣僚会合」を予定しており、国際社会にも現実的なエネルギートランジションの重要性を発信していきたい。

【国際協力本部】