Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月16日 No.3514  北欧バルト地域のスタートアップエコシステムから学ぶ -スタートアップ委員会企画部会

経団連は8月30日、スタートアップ委員会企画部会(齊藤昇部会長)をオンラインで開催し、国際協力銀行常務執行役員エクイティファイナンス部門長の森田健太郎氏、JBIC IG Partners CIO/NordicNinja VC 取締役の塩野誠氏、JBIC IG Partners インベストメントダイレクター/NordicNinja VC マネージングパートナーの宗原智策氏から、北欧バルト地域のスタートアップエコシステムについて説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 北欧バルト地域の特徴

北欧バルト地域は8カ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、アイスランド)から成り、人口規模はわが国の東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)と同程度である。各国内マーケットがわが国に比して小規模であることから、スタートアップは起業当初からグローバル志向である。また、北欧バルト諸国は世界有数の福祉国家であり、手厚い社会保障制度を有することから、リスクを取って起業・挑戦しやすい環境が整備されている点も特徴である。

■ 北欧バルト地域のスタートアップエコシステム

北欧バルト地域の代表的なスタートアップの1つにSkypeがある。同社は最終的にマイクロソフトに85億ドルで買収されたが、これはSkypeが誕生したエストニアのGDPの約3分の1(当時)に相当し、多くの人々が起業を志す契機となった。Skypeの創業者たちは現在、北欧バルト地域の各地でエンジェル投資家としてスタートアップを支援しており、支援により有望なスタートアップが次々と誕生し、その結果、海外からの投資が増加し、VC(ベンチャーキャピタル)市場が発展するという好循環を生み出している。

北欧バルト諸国は人材教育・活用にも熱心に取り組んでおり、初等教育の段階から、アントレプレナーシップや創造性を養う教育を実施しているほか、女性の登用、男性の育児参加等、人材の有効活用を積極的に推進している。また、子どものころから豊かな自然に慣れ親しむ文化を有していることから、環境への意識が非常に高く、持続的発展に貢献するスタートアップが次々と誕生している点も、北欧バルト地域のスタートアップエコシステムの強みである。

北欧バルト地域のスタートアップエコシステムは、起業家が目標とするロールモデルの存在、エンジェル投資家による積極的な支援、創造性を養う初等教育等、わが国においても見習うべき点は多い。

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講演後の意見交換では、「世界各国が持続的発展に貢献するスタートアップの育成に注力しているなかで、北欧バルト地域のスタートアップはどのような点に優位性があるのか」という質問に対し、宗原氏は、「北欧バルト地域のスタートアップは持続的発展への意識が非常に高く、厳しい視線を注ぐ自国の人々が満足する製品・サービスの開発を進めた結果として、グローバル市場において優位となる高水準のサービス・製品を生み出すことができているのではないか」と応じた。

【産業技術本部】