Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月20日 No.3529  わが国の通商政策の現状と展望 -通商政策委員会

松尾氏 小野氏

経団連の通商政策委員会(中村邦晴委員長、早川茂委員長)は12月16日、東京・大手町の経団連会館で、外務省の小野日子経済局長ならびに経済産業省の松尾剛彦通商政策局長から、通商政策の現状と展望について聴いた。概要は次のとおり。

■ WTOをめぐる動向

【小野氏】
第12回WTO閣僚会議(MC12)は、オミクロン株の影響で延期されたものの、ルール策定に向けた議論は継続しており、一定の成果もみられる。例えば、新型コロナウイルスへの対応として、ワクチンを含む医療関連品の輸出規制措置の抑制等が多国間で議論されている。また、サービスの国内規制は、有志国67カ国・地域の参加を得て交渉が妥結した。法令の公表や許認可に関する国内手続きの指針を定める内容であり、海外進出企業の利便性の向上に資することが期待される。

【松尾氏】
WTOにおける全会一致での合意形成が困難ななか、有志国によるルール策定に向けた議論が行われていることは、明るい兆しといえる。電子商取引に関する規律については、データの自由流通等の懸隔が大きい論点も含め、大多数の論点について2022年末までに収斂させることを目指すとされた。なお、22年は、日EU経済連携協定において、データの自由流通規定の必要性を見直す期限でもあり、WTOにおける議論にも影響し得る。

■ 日米関係、日米欧三極貿易大臣会合

【小野氏】
11月にそれぞれ来日したレモンド米商務長官およびタイ米通商代表との会談では、米国が経済分野でインド太平洋地域への関与を高める方針を打ち出した。今回立ち上げられた、日米間の新たな協力枠組みのもと、同地域における日米連携のあり方を具体化したい。

【松尾氏】
11月30日の日米欧三極貿易大臣会合(オンライン開催)では、一部の国による非市場的政策への対処について議論した。特に、産業補助金については、現行のWTOルールを強化する方向で、具体的提案がすでに行われており、WTOルールの策定につながる議論を加速したい。WTOを重視しつつも、米国の通商法301条・通商拡大法232条に基づく関税賦課、EU中国投資協定(※)に基づく強制技術移転の禁止や国有企業の行動規律など、米欧ともに非市場的政策に対処する独自の制度を用意している。日本としても対応が必要となる可能性がある。

※ 現在、EUでの審議は凍結中である

■ 22年の展望

【小野氏】
23年は、日本がG7議長国、米国がAPEC議長国、インドがG20議長国となり、さらに日ASEAN50周年となる。この重要な節目を控えた22年は、各種の国際的な議論に戦略的に臨むべき一年となる。環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)については、英国の新規加入交渉が開始しているほか、中国および台湾が相次いで加入を申請している。TPP11協定で定められる高いレベルの規定を完全に遵守できるのか見極める必要がある。日本は22年にTPP委員会の議長国をシンガポールに引き継ぐが、副議長国として、既存の参加国の団結を保ちながら、新規加入希望への対応のあり方を検討したい。

【松尾氏】
日本がG7の議長国を務める23年に向け、22年は各交渉を戦略的に進めることの重要性が高まるとみている。WTOについては、上述の電子商取引に関する規律の策定が勝負どころである。また、1月1日に発効する地域的な包括的経済連携協定(RCEP)がしっかり履行されるよう注視する。さらに、気候変動や人権問題等に取り組むべく、G7の議長国であるドイツと協力していく。

【国際経済本部】