Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月23日 No.3549  ポストコロナにおける国と地方のあり方 -地域経済活性化委員会

宮脇氏

経団連の地域経済活性化委員会(古賀信行委員長、小林哲也委員長、月岡隆委員長)では、わが国経済社会の持続可能性と強靱性を維持・確保する観点から、ポストコロナにおける、国と地方の行政システムの分散・社会機能の分散のあり方について検討を深めることとしている。5月25日の会合では、北海道大学名誉教授で日本政策総研理事長の宮脇淳氏から、地方分権改革のこれまでの経緯や、ポストコロナにおける国と地方のあり方に関する課題等について聴いた。

宮脇氏は、1990年代以降の第一次・第二次分権改革を通じて、中央から基礎自治体に権限と責任の移譲が進められてきた経緯を紹介。第一次改革では、機関委任事務制度の廃止など地方分権推進委員会の勧告内容が実現した。しかし、国と行政が合意できる範囲での検討は第一次で出尽くした感があり、第二次改革の地方分権改革推進委員会では、分権に関する議論を深められなかったと述べた。こうした経緯を踏まえ、今後国と地方のあり方について議論する際には、(1)検討プロセスの情報公開(2)過去の経緯を記した公文書等の情報の蓄積(3)他の制度や政策との調整を理由とした勧告内容の変更の阻止――などが課題であると指摘した。

新型コロナウイルスの感染が拡大したことによって明らかになった点として、(1)国による交付金等各種支援策の展開による中央集権化の進行(2)国の歳出チェック力の低下に伴う地方財政運営の放漫化および国への依存化(3)地方自治体間の能力差の可視化――等を挙げた。そのうえで、国の方針を地域に流す現行の形式は、政策が現場(地方自治体)と最も遠いところで決定される状況を招いていると指摘した。

また、国と地方のあり方、今後の分権に関する議論においては、危機時と平時双方の視点を持つことが重要であると説明した。なかでも、現状では災害の多発など危機時の平時化という状況もあることから、危機時と平時の「接続点」が焦点になると指摘。また、危機時から平時に戻すタイミングの判断なども難しく、地方自治体における住民を巻き込んだ重要な論点になると述べた。

最後に、今後国と地方のあり方を議論するうえでの10の視点として、「憲法上の地方自治の位置付け」「自治権の意義」「平時と危機時の議論のすみ分け」「自治原則のとらえ方」「階層性と縦割り」「活動圏域と行政界の見方」「財源と税源」「権限と事務配分」「立法分権」「デジタル化・デジタルトランスフォーメーション(DX)」を提示。国・都道府県・市町村の三層制と政府の省庁縦割り構造が絡み合った構図(投網構造)のなかで権限や財源の位置付けを見直し、投網構造を少しずつ解きほぐしていくことが肝要と述べた。あわせて、各地方自治体においてデジタル化・DXに関する理解を促進することが重要だと指摘した。

【産業政策本部】