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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月23日 No.3549 米国の通商政策に関する懇談会を開催

ケスラー氏(左)、マンデル氏

経団連の通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長)とアメリカ委員会連携強化部会(吉川英一部会長)は5月31日、ウィルマーヘイル法律事務所のジェフ・ケスラー弁護士ならびにローレン・マンデル弁護士の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。両氏による説明の概要は次のとおり。

■ インド太平洋経済枠組み(IPEF)

米国は、IPEFを提唱、発足させるなど、インド太平洋地域への関与の重要性を強く認識している。米政権は、IPEFを「将来の交渉を開始するための議論の場」と定義し、(1)貿易(2)サプライチェーン(3)クリーンエネルギー、脱炭素、インフラ(4)税・反腐敗――の四つの柱で構成するとしている。

このうち、サプライチェーンについては、強靱性を高めるため、友好国に回帰する「フレンド・ショアリング」が進む可能性がある。

他方、貿易の柱には、市場アクセスの拡大が含まれず、貿易が労働や環境に与える影響など、米国が重視する分野に取り組む方針が明示されている。IPEFは、市場アクセスを含まないからこそ、米国内で賛同が得られている。その意味で、環太平洋パートナーシップ(TPP)復帰の優先度は低い。しかし、同時に、市場アクセスが含まれないために、他国に参加のインセンティブを与えられるかどうか疑問が残る。バイデン政権は、米国がAPEC議長国を務める2023年までに、IPEFの具体的な成果を目指すとみられる。

■ 米中対立

バイデン政権は、トランプ前政権からの厳しい対中政策を踏襲している。前政権と異なるのは、バイデン政権が同盟国、パートナー国との連携を通じて中国に対峙している点である。ブリンケン国務長官は、米国の対中政策を「投資、連携、競争」のキーワードに基づいて推進すると発言した。すなわち、米国内への投資を通じて米国の競争力の底上げを図るとともに、同盟国、パートナー国と連携して、中国に対し、ルールに基づく国際経済秩序のもとでの競争を求める方針である。

米議会では、超党派の対中競争法案が議論されている。これは、上下院でそれぞれ可決した対中法案を一本化したものであり、半導体の研究開発に520億ドルの資金を充てること等を定める。ただし、法案が議会を通過し得るかどうかは依然不透明である。その他、ウイグル強制労働防止法で、新疆ウイグル自治区で製造等された製品の輸入を原則禁止することを定めるなど、人権問題にも厳しく対処している。

仮に、中間選挙で、上下院ともに共和党が過半数を獲得したとしても、米国の対中政策の基本指針に大きな変更はないだろう。ただし、民主党が担う行政府に対して、議会が、より強硬な対中姿勢を取るように迫る可能性はある。

■ 米国の対ロシア制裁

バイデン政権は、同盟国、パートナー国と歩調を合わせながら、対ロシア制裁を実施している。例えば、米欧間では、米EU貿易技術評議会(TTC)の枠組みで、効果的な制裁を協調して実施するための協議が進められている。実際、先般、EUはロシア産石油の大半を輸入禁止とする追加制裁案に合意した。米国においては、今後、新たな制裁措置を導入するのではなく、既存の制裁の強化を通じて迂回を防ぐ方針がとられる見込みである。

【国際経済本部】

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