1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年8月11日 No.3556
  5. 労働時間制度をめぐる検討状況

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年8月11日 No.3556 労働時間制度をめぐる検討状況 -労働法規委員会労働法企画部会・労働時間制度等検討ワーキング・グループ

松原氏

経団連は7月20日、労働法規委員会労働法企画部会(田中憲一部会長)と労働時間制度等検討ワーキング・グループ(池田祐一座長)の合同会合を開催した。厚生労働省労働基準局労働条件政策課長の松原哲也氏から、同省が同月15日に公表した「これからの労働時間制度に関する検討会」報告書の内容を中心に、労働時間法制を取り巻く状況について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 労働時間制度のこれまでの経緯

労働基準法は1947年の制定以降、時代の変化に応じて改正されてきた。具体的には、87年にフレックスタイム制や専門業務型裁量労働制等が、98年には企画業務型裁量労働制が創設された。2019年から順次施行されている働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制の導入に加え、高度プロフェッショナル制度が創設された。同法案に含まれていた裁量労働制に関する改正案については、実態調査の公的統計としての有意性・信頼性にかかる問題が発生したことから、再度、実態調査を行ったうえで改革案を検討することとされた。これを受けて、21年6月に裁量労働制実態調査の結果を公表のうえ、同年7月に「これからの労働時間制度に関する検討会」を設置し、同調査結果を踏まえて議論した。

■ 検討会報告書のポイント

今後、わが国の労働力人口が大きく減少するなか、企業間の人材獲得競争が激化する。企業が求める人材像も大きく変わり、「自ら考え、行動できる人材」や「柔軟な発想で新しい考えを生み出せる人材」へのニーズは一層高まるだろう。こうした経済社会の変化等に労働時間法制が適切に対応し得ているかは常に検証を要する。

そこで同報告書では、労使のニーズに沿った働き方は、現行の労働時間制度の正しい活用により相当程度実現可能としたうえで、これからの労働時間制度に求められる視点として、(1)労働者の確実な健康確保(2)労使双方の多様なニーズに応じた働き方の実現(3)労使の十分な協議に基づく適切な制度選択・運用――の3点に整理した。

このうち、経団連が見直しを強く要望している裁量労働制については、実態調査から、(1)適用労働者の約8割が制度適用に満足(2)制度適用により労働時間の著しい増加や処遇の悪化、健康状態の悪化につながるとはいえないこと(3)裁量の程度が小さい場合に長時間労働となる確率が高いこと(4)年収が低くなるにつれて制度適用の満足度が低下(5)労使委員会の実効性がある場合には長時間労働となる確率が低下――など、現状と課題を確認した。以上を踏まえ、報告書では、対応の方向性として次の4点を明示した。

  1. 対象業務
    対象業務の明確化等による制度の趣旨に沿った対応の可否を検証のうえ、実施を検討。それが難しい場合には必要に応じて見直しを検討

  2. 労働者が理解・納得したうえでの制度の適用と裁量の確保
    本人同意と同意の撤回の制度上の明確化。長時間労働など健康への影響が懸念される場合の適用解除措置の制度設計等

  3. 労働者の健康と処遇の確保
    健康・福祉確保措置の項目の追加や複数適用の要件化。特別な手当の支給等による相応の処遇の確保に向けた対応の明確化

  4. 労使コミュニケーションの促進等を通じた適正な制度運用の確保
    労使で、制度導入時に限らない、制度の運用状況の確認・検証による適正な制度運用の確保

■ 今後の対応

厚労省は、報告書が示した対応の方向性を踏まえつつ、今後は労働政策審議会において裁量労働制の見直しを含めた労働時間制度のあり方を検討する予定である。

【労働法制本部】

「2022年8月11日 No.3556」一覧はこちら