Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年8月11日 No.3556  第122回経団連労働法フォーラム開催〈3〉 -報告Ⅱ「高年齢者が活躍できる環境整備」/弁護士 五三智仁氏(五三・町田法律事務所)

五三氏

経団連および経団連事業サービスは7月14、15の両日、経営法曹会議の協賛により「第122回経団連労働法フォーラム」をオンラインで開催した(7月28日号8月4日号既報)。今号では、2日目のテーマ「高年齢者が活躍できる環境整備」に関して、経営法曹会議所属弁護士による関連法令や裁判例に基づく企業実務上の対応策についての報告および参加者からの質問に関する討議等の模様を紹介する。

■ 60歳定年時における再雇用

高年齢者雇用安定法(高年法)が求めているのは継続雇用制度の導入である。継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などを事業主と労働者の間で決めることができる。

■ 65歳への定年引き上げ

定年を引き上げ、その後の労働条件が既得権になった場合、それを不利益に変更する場合は合理性判断が厳格に問われる。他方で、定年引き上げとそれに伴う労働条件の変更を同時に実施する場合には、実質的な不利益変更と評価される場合であっても、合理性が認められる余地は広いと思われる。

■ 70歳までの就業機会確保の努力義務

70歳までの就業機会確保の努力義務は、やがて義務化され対象者基準も設定できなくなると見込まれる。65歳以降は、選択制の雇用形態、例えば人事考課が高い者は継続雇用と創業支援等措置を選ぶことができ、一定の人事考課以下の者は創業支援等措置のみ選択できる等の定め方が考えられる。

<質疑応答・討議>

質疑応答・討議では、参加者からの多岐にわたる質問に対し、各弁護士からさまざまな実務的なアドバイスがなされた。

労働者の健康確保措置については、労働安全衛生法62条を基本にしつつ、2020年3月16日に公表された「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)に則った安全対策を講じることの重要性が示された。

ローパフォーマーへの対応については、65歳までは雇用義務が生じることから、本人ができる仕事を慎重に選んであてがうべきであるとの回答があった。

65歳以降の雇用において賃金減額ができるかについては、1年ごとの契約を繰り返す場合には一概には難しいとの意見がある一方で、65歳以降は個人ごとに能力のばらつきが大きくかつ年金受給資格も得ているため、契約更新時の労働条件の変更は許容されるべきとの意見も出された。

【労働法制本部】