Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月13日 No.3562  「『次期教育振興基本計画』策定に向けた提言」を公表

経団連は10月11日、「『次期教育振興基本計画』策定に向けた提言~主体的な学びを通じ、未来を切り拓くことができる多様な人材の育成に向けて」を公表した。教育振興基本計画は、わが国教育行政の根幹的な計画であり、5年ごとに定められる。現在、中央教育審議会(中教審)は「次期教育振興基本計画」(次期計画)策定に向けて検討しており、次期計画に経済界の意見を反映すべく、優先的に盛り込むべき基本的な考え方や施策等について提言した。概要は次のとおり。

■ 第3期教育振興基本計画(現行計画)策定以降の変化

コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻、サステナビリティを強く意識した行動変容の要請、政府による「人への投資」拡大方針など、2018年の現行計画策定後の大きな環境変化を踏まえ、教育や人材育成の内容・手段も改革が必要である。変化の激しい時代において、生涯にわたって主体的に学び続け、グローバル感覚を身につけつつ、未来を切り拓くことができる、多様な人材の育成は極めて重要な国家的課題である。次期計画は経済社会の変革に対応した内容にすべきである。

■ 教育振興基本計画の実効性向上

教育振興基本計画の実効性向上に向けて、次期計画では、優先課題を明確化し、施策にメリハリをつけるべきである。そのうえで、最優先で取り組むべき教育政策は、小学校から大学までのタテの連続性を重視する必要がある。また、重要な施策は「指標」と「目指すべき水準」(数値目標)を原則セットで設定すべきである。提言では、経済界が重要と考える17の指標を示したうえで、特に重要と考える指標を五つ挙げている(図表参照)。さらに、中教審で1、2年に1回程度、進捗状況を評価し、施策を再検討・検証する機会を設けることが求められる。

経済界が特に重要と考える指標および目標値の案

■ 次期計画に盛り込むべき理念・目標および基本的な方針

次期計画の理念として、(1)主体的な学びの実現等の観点から「主体性」(2)新たな価値の創造といった観点から「創造性」(3)「多様性・公正性・包摂性」(4)社会に開かれた教育等の実現の観点から「連携・協働」――の四つを掲げるべきである。

また、経済、社会、個人との関係性に着目した三つの教育目標((1)Society 5.0で活躍する人材の育成(2)SDGsの達成に貢献する人材の育成(3)個人のウェルビーイング向上)について、同時達成を目指す必要がある。

さらに、(1)多様性を尊重し、主体性・好奇心・創造性を育む教育(2)幅広い視野でイノベーションを創出し、未来を切り拓く力の育成(3)新時代の学びのための基盤づくり――といった、三つの基本的な方針を打ち出すことが求められる。

■ 優先的に取り組むべき教育政策の九つの施策

優先的に取り組むべき施策として、七つの教育内容と二つの基盤づくりを提言している。具体的な教育内容としては、(1)STEAM教育(注)の推進や高校段階からの文系・理系のコース分けの是正等の「文理分断からの脱却」(2)小学生から大学生・社会人までの「デジタル人材の育成」(3)留学の促進等の「グローバル教育・海外留学」(4)「キャリア教育・起業家教育等の推進」(5)「子どもの才能を伸ばす多様な教育機会の提供」(6)「大学院教育の充実」(7)「リカレント教育の充実」――である。

教育の基盤づくりとしては、(8)ハイブリッド型教育等を目指した「教育デジタルトランスフォーメーション(教育DX)の推進」(9)「産学官の連携・協働等を通じた、社会に開かれた学校づくり」――が不可欠である。

■ 教育分野における経済界の取り組み・支援

経済界はわが国経済の持続的な成長を実現するため、引き続き、各企業の経営方針や人材・技術・ノウハウ等のリソースに照らして効果的と考える教育施策に、自主的かつ積極的に貢献していく。

(注)五つの領域(Science〈科学〉、Technology〈技術〉、Engineering〈工学〉、Art〈芸術〉/Liberal Arts〈教養〉、Mathematics〈数学〉)を対象として、科学技術の素養を涵養するとともに、デザインや芸術、教養の要素を取り入れ創造性も育む教育

【SDGs本部】