Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月1日 No.3573  鶴岡サイエンスパークを視察 -バイオエコノミー委員会

経団連のバイオエコノミー委員会(小坂達朗委員長)は12月6から7日にかけて、総勢15人の視察団を山形県鶴岡市に派遣した。政府から認定を受けた地域バイオコミュニティである鶴岡バイオコミュニティの中核として先進的な取り組みを進めている鶴岡サイエンスパーク等を視察し、関係者から成功の要因や今後の取り組みについて聴いた。

■ 鶴岡市長表敬訪問

皆川市長表敬訪問(右手前2人目)

皆川治鶴岡市長が、鶴岡サイエンスパーク開設に至る経緯や鶴岡市の主要産業等を説明した。皆川市長は、市全体の予算規模が約700億円のなかで同パークに毎年3.5億円を支援しており、開設当時は市民から疑いの目を投げかけられたものの、成果や雇用が生まれたことで、今では市民が自分たちの鶴岡サイエンスパークだという認識を持つまでに至っていると語った。

また、地元の高校生がAO入試の合格を目標にインターンシップとして鶴岡サイエンスパーク内で世界的な研究に携わり、大学合格を果たして卒業した後に、鶴岡市に戻って研究活動を行うといった事例も生じており、鶴岡市の子どもにとって将来の選択肢が増えていると述べた。

■ 鶴岡サイエンスパーク

鶴岡サイエンスパーク(冨田氏)

まず、冨田勝鶴岡サイエンスパーク代表理事・慶應義塾大学先端生命科学研究所長が、同パークの概要について説明した。

冨田氏は、従来の生物学は仮説検証型の学問であったが、開設当初から、その仮説の設定に際してデータ分析を活用することで成果を上げてきたと指摘。その教訓から、日本では新たな挑戦に反対する声が大きいことが通例であるものの、物事の本質を見極めて挑戦することこそがイノベーションのために重要であると強調した。

次に、これまで創業したスタートアップ9社のうち2社が説明。MOLCUREの玉木聡志CSOが、AIを活用した新薬開発や他社との連携について、また、フェルメクテスの大橋由明CEOが、現下の食料問題や代替肉・培養肉などフードテックに関する動向と、同社で研究開発を行っている納豆菌粉や食品への活用可能性等について、それぞれ説明した。

■ Spiber

Spiber

慶應義塾大学先端生命科学研究所発2番目のスタートアップであるSpiberを訪問。菅原潤一共同創業者・取締役兼執行役は、遺伝子合成から微生物の培養、紡糸に至るまでのオリジナルの実験装置・工作機械など同社内を案内しつつ、同社が製造する人工タンパク質素材を使用して実際に発売された衣服、現在開発中の自動車素材への応用技術などについて詳説した。

【産業技術本部】