Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月12日 No.3574  第14次労働災害防止計画と転倒防止・腰痛予防対策、個人事業者等の安全衛生対策の検討状況 -労働法規委員会労働安全衛生部会・ワーキング・グループ

経団連は12月8日、労働法規委員会労働安全衛生部会(今村尚近部会長)と関係するワーキング・グループによる合同会合をオンラインで開催した。厚生労働省労働基準局安全衛生部の樋口政純調査官から「第14次労働災害防止計画の検討状況」について、澤田京樹中央産業安全専門官から「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会 中間整理」について、船井雄一郎課長補佐から「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討状況」について、それぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 第14次労働災害防止計画の検討状況(樋口氏)

樋口氏

厚生労働省は、労働災害を減少させるために国や事業者が重点的に取り組む事項を定めた「労働災害防止計画」を5年に一度策定している。現在、労働政策審議会(安全衛生分科会)において、2023年度から27年度を計画期間とする「第14次労働災害防止計画」(14次防)の策定に向けて検討を重ねている。

14次防(案)の主な特徴は次の2点である。

1点目は、労働災害に関する分析の強化である。従来の計画では死亡者数や死傷者数等減少の目標の達成状況ばかりに焦点を当て、労働災害の発生要因の分析が不十分だった。14次防では、労働者の協力を得ながら事業者が実施する事項を「アウトプット指標」、事業者の取り組みにより期待される事項を「アウトカム指標」と定める予定である。そのうえで、個別指標の達成状況を確認するとともに、両指標の因果関係も評価し、計画の検証につなげていきたい。

2点目は、中小事業者に対するアプローチの強化である。労働者の安全衛生対策は事業者の責務だが、厳しい経営環境等の事情もあり、中小事業者の取り組みが遅れている。安全衛生対策が経営や人材確保・育成の観点からプラスとなることを周知するなど、事業者の自発的な取り組みの促進と社会的に評価される環境の整備を図っていきたい。

■ 転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会 中間整理(澤田氏)

澤田氏

労働災害による休業4日以上の死傷者数は増加傾向にあり、21年には約15万人に達した。特に、小売業や社会福祉施設等の第三次産業において、転倒や腰痛等の労働災害が多く発生している。

そこで、「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」が発足し、5月から8月までの4回の議論を経て、9月27日に中間整理を取りまとめた。

中間整理では、(1)エビデンスに基づいた対策の推進(2)安全衛生教育のあり方、関係者の意識改革(3)業種や業務の特性に応じた取り組み(4)職場における対策の実施体制の強化(5)労働者の健康づくり等(6)中小企業等事業者の支援――について、具体的な方策を提示した。各方策は14次防に盛り込まれる予定である。

■ 個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討状況(船井氏)

船井氏

建設アスベスト訴訟をめぐり、最高裁判所は21年5月、労働安全衛生法(安衛法)22条や57条の規定は、同じ場所で働く労働者でない者も保護する趣旨と判断した。その後、労働政策審議会(安全衛生分科会)での議論を経て、危険有害作業を行う事業者は、当該作業の請負人や同一の作業場にいる労働者以外の者に対し、自社の労働者と同等の保護措置を講じることが義務付けられた。

審議会の議論では、(1)安衛法22条や57条以外の規定のあり方(2)注文者による措置のあり方(3)労働者以外の者による事業者の措置の遵守義務のあり方――等について、検討の場を別に設けることとされた。

そこで、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」が発足し、5月から11月までに7回開催した。現在、個人事業者等の災害を防止するための対策に関して、危険有害作業とそれ以外の作業に分けたうえで、各業種・業態に共通する課題と特有の課題について、(1)国や関係団体に求める措置(2)個人事業者等に求める措置(3)事業者や注文者等に求める措置(4)その他――に整理して議論している。

【労働法制本部】