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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月19日 No.3575 2023年版経労委報告を公表 -「人への投資」促進を通じたイノベーション創出と生産性向上の実現

会見する大橋副会長

経団連(十倉雅和会長)は1月17日、2023年の春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンスや雇用・労働に関する経団連の基本的な考え方を示す「2023年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を取りまとめ、大橋徹二副会長・同委員会委員長が記者会見を行って公表した。

23年の春季労使交渉について、大橋委員長は、「賃金決定の大原則」に則って検討する方針は堅持したうえで、「物価動向を特に重視しながら、賃金引き上げと総合的な処遇改善・人材育成を積極的に呼びかけていく」との基本方針を表明した。

さらに大橋委員長は、「できる限り多くの機会をとらえて周知活動を展開し、経労委報告の内容を実行へとつなげていきたい」と述べ、公表後の活動にも注力する意向を示した。同報告の概要は次のとおり。

■ 第Ⅰ部 雇用・人事労務管理に関する諸課題

働き方改革の継続・深化のカギとなる働き手の「エンゲージメント」を高めるべく、企業は働き方改革を「人への投資」と位置付け、働き手とのコミュニケーションの拡充、各施策の効果測定・評価・改善に向けたサイクルの継続などに取り組むことが必要である。働き方改革のさらなる推進には、中小企業も含めたサプライチェーン全体で、経営環境の整備に向けた支援も重要である。

企業は多様な人材を受け入れ、働き手の個性や強みを最大限発揮できるよう、人権の尊重や公正性・公平性(エクイティ)の概念を付加した「DE&I」(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を浸透させていくことが極めて重要である。個々人で異なる特性等を強く意識しながら、多様な人材が活躍できる環境を整備することが人事労務管理での要諦といえる。

デジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)の推進に伴う産業構造の変革や労働需要の変化に対応し、わが国経済が持続的な成長を続けていくためには、硬直的なわが国の労働市場を成長産業・分野等への円滑な労働移動に適したものへと新たにつくり上げることが求められる。働き手にはキャリアを主体的に考え、エンプロイアビリティの向上に資する継続的な能力開発・スキルアップが期待される。一方、企業は働き手の主体的な取り組みを継続的に支援する必要がある。政府には雇用のマッチング機能の強化、「労働移動推進型」のセーフティーネットへの移行の早期検討を求める。

地方経済の活性化には、魅力的な地域づくりや都市部の人材の受け入れなどによって、域外からの新たな人の流れを創出することが欠かせない。地域の中小企業の人材確保や新規のビジネス創出においては、公的支援の活用のほか、地域のさまざまなステークホルダーとの連携・協働などを通じ、新たな価値創造に取り組んでいくことが肝要である。

■ 第Ⅱ部 2023年春季労使交渉・協議における経営側の基本スタンス

足元の物価上昇を契機として、わが国社会に染みついたデフレマインドを払拭し、賃金と物価が適切に上昇する「賃金と物価の好循環」を形成していく必要がある。

中期的な観点から、働き手との価値協創による成長とその適切な分配としての「人への投資」を通じて賃金引き上げの機運を醸成し、「構造的な賃金引き上げ」と「分厚い中間層の形成」につなげることが望まれる。こうした「社会性の視座」に立ち、「人への投資」を一層重視した企業行動への転換の絶好の機会との認識のもと、経団連は「サステイナブルな資本主義」の実践に取り組む。

各企業が「賃金決定の大原則」に則って検討をする際、さまざまな考慮要素のうち「物価動向」を特に重視しながら、企業の社会的責務として、賃金引き上げのモメンタムの維持・強化に向けた積極的な対応を呼びかけていく。

23年春季労使交渉・協議においては、物価上昇という特別な状況のもと、「成長と分配の好循環」の形成に向けた正念場との認識を企業労使で共有し、「賃金引き上げ」と「総合的な処遇改善・人材育成」を積極的に検討し、成長の果実を働き手に適切に分配していくことが望まれる。

「賃金引き上げ」では、月例賃金(基本給)、諸手当、賞与・一時金を柱として、自社に適した方法の前向きな検討・実施を求めたい。

「総合的な処遇改善・人材育成」では、エンゲージメント向上を軸に、「働きがい」と「働きやすさ」に資する諸施策の導入・拡充が重要である。

労使は価値協創に取り組む経営のパートナーであるという認識のもと、経団連は、わが国の社会的課題の解決に向け、未来を「協創」する労使関係を目指していく。

【労働政策本部】

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