Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月2日 No.3577  春季労使交渉・協議の焦点〈1〉 -連合の春季生活闘争方針

1月23日に開催した連合との懇談会(別掲記事参照)を皮切りに、2023年春季労使交渉が本格化する。そこで5回にわたり、同交渉・協議の焦点等を解説する。初回は、連合の春季生活闘争方針を取り上げる。

Q 連合の「2023春季生活闘争方針」(2023闘争方針)の基本スタンスを教えてください。

A 「くらしをまもり、未来をつくる。」をスローガンとする2023闘争方針において、連合は「人への投資」を一層積極的に行うとともに、投資促進やサプライチェーン全体を視野に入れた産業基盤強化などによって「成長と分配の好循環」を持続的・安定的なものにする必要性を指摘しています。そのうえで、22年同様、「未来づくり春闘」を掲げ、その深化とあわせて、ステージを変える転換点とすべく、社会的なうねりをつくるために先頭に立って運動を牽引するとしています。具体的には、(1)賃上げ(2)働き方の改善(3)政策・制度の取り組み――を柱に「人への投資」と月例賃金の改善に取り組むとしています。

Q 月例賃金の要求はどうなっていますか。

A 所定内賃金で生活できる水準を確保するとともに、「働きの価値に見合った水準」への引き上げを目指しています。
具体的な要求指標として、「底上げ」では「賃上げ(ベースアップ)分3%程度、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め5%程度の賃上げ」を掲げています。22年より1%引き上げて「3%程度」とした根拠については、内閣府の年央見通し(22年度実質GDP成長率2.0%、消費者物価上昇率2.6%)や日本全体の生産性上昇率のトレンド(1%弱)を念頭に総合的に勘案したとしています。
「底支え」では、22年と同様に時給1150円以上の水準で企業内最低賃金協定の締結に取り組むとしています。
「格差是正」では、企業規模間の目標水準を22年から年齢ポイントによって1000~2000円引き上げ、その到達を目指すとしています。
中小組合(組合員数300人未満)に対しては、賃金カーブ維持相当分を確保したうえで、自身の組合の賃金とさまざまな指標を比較し、その水準の到達に必要な額を加えた総額での要求を求めています。また、多くの中小組合で賃金実態が把握できない等の事情があることを踏まえ、「賃金カーブ維持分(4500円)」の確保を大前提に、「賃上げ目標金額(ベア分)9000円」を合算した「総額1万3500円以上」を目安とする引き上げ要求額を掲げています。

(図表のクリックで拡大表示)

Q 22年より要求水準が上がったことをどう考えたらよいでしょうか。

A 物価上昇への対応として賃金引き上げが社会的に強く求められており、要求水準を22年より引き上げたことは十分理解できます。ただ、「3%程度」「総額1万3500円以上」との要求水準に基づいて企業別労働組合が要求を提出した場合に、建設的な賃金交渉になりにくい企業もあるのではないかとの懸念もあります。自社の状況を企業労使で正しく共有したうえで議論を重ね、最適な対応を見いだしてもらえればと思います。

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連合の2023闘争方針を踏まえ、主要な産業別労働組合が2月中旬までに統一要求項目等を機関決定します。その後、大手を中心に多くの企業別労働組合が2月中を目途に要求書を企業へ提出。3月中旬以降の回答指定日(集中回答日は3月15日)に向けて、各企業において23年の春季労使交渉が本格的に始まります。

【労働政策本部】


春季労使交渉・協議の焦点(全5回)
〈1〉連合の春季生活闘争方針
〈2〉経営側の基本スタンス
〈3〉円滑な労働移動
〈4〉エンゲージメントと働き方改革
〈5〉労働時間制度