Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月16日 No.3583  消費を通じた社会的課題の解決 -消費者政策委員会企画部会

大平氏

経団連は2月16日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会企画部会(楯美和子部会長)を開催した。武蔵大学経済学部の大平修司教授から、消費を通じた社会的課題の解決、サステイナブルな消費の普及に向けたアプローチについて説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 社会的課題の解決と消費行動

これまで、企業や投資家、ボランティアなどのさまざまな主体が、社会的課題の解決を目指してきた。近年、消費者が環境や人権等に配慮した商品を購入したり、商品等の使用や廃棄の際に環境負荷等に配慮したりするような行動が広がっている。

例えば、自動車や家電製品等における「エコ商品」に加えて、リサイクル品や再生素材を使用した衣料品等が普及してきている。また、寄付付き商品は、例えば商品に付いているマークを集めて応募し、学校の教材資金にする活動等、日本ではなじみ深い。被災地支援等を含め、消費行動を通じて生産者や企業を応援する「応援消費」も拡大している。

■ ミニマリストの広まり

必要以上に消費を「しない」という観点からは、コロナ禍の巣ごもり生活も背景に、生活や心に余裕をつくるべく、大事なモノ以外は減らす「ミニマリスト」という生活スタイルが広がっている。ミニマリストといっても、必ずしも「何も持たない」暮らしではなく、必要なモノにはお金を非常に費やす人も少なくない。

■ 消費者の属性に応じたアプローチ

消費者は、購入経験を通じて商品を評価する。まずは商品を手に取ってもらえるような工夫が必要である。例えば購入経験が少ない人は、必ずしもパッケージの小さな文字までは確認しない。小売店に特集コーナーを設置し、社会的課題の解決につながる商品について表示することも一案である。購入経験がある人々に対しては、商品を買いたくなるような、感情に訴えるマーケティングも欠かせない。社会的課題解決の側面に加えて、パッケージやデザインを含めて魅力的な商品を提供することが重要になる。

■ 消費者教育、応援消費

社会的課題を解決するためには、消費者自身が倫理性を備えることも必要である。その際に例えば、商品の高額転売、店員への暴言、迷惑動画の拡散等が問題になっていることに対し、消費者のコンプライアンスを高めるような「消費者教育」が重要になる。他方で、社会的課題について発信すると、「偽善者」「売名行為」と批判されることがある。「善い人」であるとみられたくないという声や、本当に社会的課題の解決につながるのか、不安があるという声も聴かれる。こうした声に向き合うためにも、企業においては、課題解決の事例や途中経過を、自社のウェブサイトに限らず、幅広く情報提供していくことが重要である。また、「エシカル(倫理)」という言葉は意味が強い。陰徳的な考え方や葛藤を生じにくくするためにも、企業は、消費者により身近な「応援する消費」という考え方で活動を展開してはどうか。

◇◇◇

講演後、海外と比較した日本の消費文化、ライフステージにおける健康志向とエシカル消費の関係、クラウドファンディングを例とした社会的課題の「可視化」の重要性等について、活発に意見交換した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】