Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月23日 No.3584  IASBとの懇談会を開催 -IASBからIFRSの主要基準の開発動向を聴く

経団連の金融・資本市場委員会企業会計部会(佐々木啓吾部会長)は2月27日、国際会計基準審議会(IASB)との懇談会を開催した。アンドレアス・バーコウIASB議長から、国際会計基準(IFRS)の開発動向について説明を聴くとともに意見交換した。IASBからは、リンダ・メゾンハッター副議長、鈴木理加理事、ニリ・シャー エグゼクティブ・テクニカル・ディレクターが参加した。説明の概要は次のとおり。

右からバーコウ氏、メゾンハッター氏、鈴木氏

■ のれんの会計処理

「のれんおよび減損」のプロジェクトにおいて、のれんの会計処理に関して「減損のみ」から、「償却+減損」へと変更するか検討した。しかし、基準を変えるほどの説得力ある証拠は見つからず、「減損のみ」の処理を維持することを決定した。

市場関係者の間で意見が分かれたことに加え、米国財務会計基準審議会が、米国会計基準について、「減損のみ」の処理を維持する方針を出したことも大きかった。日本の関係者は残念に感じていると思うが、理解してほしい。

■ 基本財務諸表

損益計算書の表示や関連する開示を検討する「基本財務諸表」プロジェクトは、的を絞ったアウトリーチ活動を踏まえ、最終化に向けて検討している。ポイントは3点である。

まず、損益計算書において、各損益は、「営業」「投資」「財務」の3項目に分類して表示する。関連会社等から生じる「持分法投資損益」は、「営業」ではなく「投資」区分に表示する(営業外損益とする)が、日本の意見を踏まえ、「営業損益」と「持分法投資損益」を合算した小計を特定された項目として追加することは認める。

2点目として、財務諸表外でのコミュニケーションで用いられる「経営者業績指標」に関する開示を求める方向は変えないが、反証規定を盛り込み、その範囲が広がり過ぎないようにする。

3点目として、注記において、一定の費用項目の分解(ある費用項目が、売上原価や販売費等にどれだけ含まれているかの開示)を求める。その費用項目は、従業員給付、減価償却費、償却費、関連する費用項目である棚卸資産評価減、減損損失を加えた五つを最大限とする。

■ 国際税務改革への対応

経済協力開発機構(OECD)が公表した国際課税についての「第2の柱モデルルール」が適用されれば、軽課税国で生じた利益に対して一定の課税がなされるため、会計上、将来的な税金負担に対する繰延税金を認識する必要が生じる。

「第2の柱モデルルール」について、早めに導入する国があることから、会計処理についての救済措置を設けるべく、公開草案を公表した(注)

第1に、国際税務改革が定着する前に不確実性の高い情報開示が求められることを避けるため、繰延税金の計算を一時的に免除する提案を行った。公表後直ちに適用する。

第2に、2023年1月以降に開始する事業年度から(国際税務改革についての国内税制が発効する前においては)、(1)企業の実質的な法人税負担率が15%未満である法域(2)その法域における会計上の利益および税金費用の総額――の開示を求めている。

同公開草案に寄せられたコメントを踏まえ、4月11日を目途に、最終的な方向性を決めたいと考えている。

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意見交換において、経団連から、「のれんの会計処理について、今後も、さまざまな機会をとらえて、IASBで検討すること」「損益計算書の表示や開示のあり方は、企業の実態を踏まえたうえで、柔軟でコスト・ベネフィットにかなう内容となるように、引き続き検討すること」「国際税務改革にかかる基準の改訂については、『一時的な例外措置』を切り離して、3月中に最終化すること」をIASBに求めた。

(注)経団連は、同草案に関しIASBにコメントを提出した
IASB「国際的な税制改革~第2の柱モデルルール(IAS第12号の修正案)」へのコメント

【経済基盤本部】