Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月23日 No.3584  博士人材のキャリアパス構築に向けて -ジョブ型研究インターンシップに関する説明会を開催

文部科学省と経団連は、博士課程学生を対象とした長期かつ有給のインターンシップである「ジョブ型研究インターンシップ」を推進している。3月1日、ジョブ型研究インターンシップに関する説明会を開催した。文部科学省高等教育局学生支援課の鈴木顕企画官が同インターンシップの概要等を説明するとともに、多くの企業に理解と参加を求めた。説明の概要は次のとおり。

■ 企業における博士人材のキャリアパスの重要性

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)(注)が取りまとめた「科学技術指標2021」によると、わが国は、博士号保持者のうち企業に属する者の割合が13.5%と、米国の39.9%と比べて低い。また、企業の研究者に占める博士号保持者の割合は約4%にすぎない。経済産業省の「企業における博士人材の活用及びリカレント教育のあり方に関するアンケート調査」(2020年)によると、企業が博士人材を採用しない理由として「採用する人材は、企業が必要とする人材像に合う人材であればよく、必ずしも博士号を持っている必要はない」との回答が多いなど、日本企業において博士号の価値が評価されていない傾向がある。また、博士課程学生の約半数が、指導教員や知人等の紹介によって就職先を決めているとの実態がある。

しかしながら、NISTEPの「民間企業の研究活動に関する調査報告2020」によると、採用後の企業満足度では、博士課程修了者の方が学士・修士課程修了者よりも、「期待を上回った」と回答する企業が多い。また、発明に関しても、博士号取得者は、修士号取得者と比べて、入社直後から高い生産性を有しており、キャリアを通じてさらに上昇していく傾向があるなど、企業の研究開発に大きく貢献することが期待される。

人口100万人当たりの理工系博士号取得者数は、他の主要国では増加する傾向にあるのに対し、日本のみ低水準にとどまっている。博士号取得者数の確保等は、国際競争力向上の観点からも不可欠と考えられる。

■ ジョブ型研究インターンシップの概要

2021年度トライアルに関するアンケート結果

ジョブ型研究インターンシップの主なポイントは三つある。第1に、企業と学生は雇用契約を結んだうえで、2カ月以上の長期かつ有給を前提として、企業が学生を募集する際に提示したジョブディスクリプション(職務記述書)に基づいて、企業の研究に貢献する。なお、同インターンシップへの参画にあたり、企業側でのジョブ型雇用制度の導入を要件としない。第2に、大学の正規の教育課程として実施する。第3に、受け入れた企業はインターンシップの評価を採用選考の際に活用できる。

学生にとってのメリットは、進路の可能性を広げることができること。企業のメリットは、多様な大学・分野から企業競争力向上に貢献できる優秀な博士課程学生を採用できること。大学のメリットは、博士課程のカリキュラム等の質が向上し、大学のブランド力強化が期待できること――である。

21年度に自然科学系の博士課程学生を対象にトライアルを実施した結果、参加企業とのマッチングが成立した学生23人がインターンシップに参加した(図表参照)。22年度は、同トライアルを踏まえて実施中である。

23年度は、4~5月を準備・広報期間とし、応募・選考の開始は6月以降とする方針である。また23年度から、自然科学系に限らずすべての研究分野の博士課程学生を対象とする。

ジョブ型研究インターンシップに取り組む「ジョブ型研究インターンシップ推進協議会」には、現在、企業50社と大学64校が参画している。文科省は、参画企業・大学のさらなる拡大を期待している。

ジョブ型研究インターンシップにご関心の向きは、問い合わせ先まで連絡してほしい。

◇ 問い合わせ先
文部科学省高等教育局学生支援課インターンシップ推進係
(メール=gakushi@mext.go.jp)

(注)国の科学技術政策立案プロセスの一翼を担うために設置された文科省直轄の研究機関

【SDGs本部】