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Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障 医療保険制度改革に関する要望

2014年5月13日
一般社団法人 日本経済団体連合会

政府においては、昨年成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(プログラム法)に基づき、同法に示された医療保険制度の検討事項について、2015年通常国会への法案提出を目指した議論を開始した。

急速な高齢化と現役世代の減少に直面するなか、持続可能で経済活動と両立しうる改革を実現し、国民の安心・安全を支える社会基盤を確立するためには、プログラム法に記された改革方針では十分とは言えない。

今後の医療保険制度改革に向けた政府議論にあたり、以下を要望する。

1.際限なき保険料負担増の抑制

高齢者医療への拠出金負担が現役の医療保険者の運営を圧迫し、保険料の引き上げを余儀なくされている。国民医療費の約6割を占める高齢者医療費は高齢化の進展に伴い、ますます増大すると見込まれるなか、現役世代の負担増と企業のコスト増が不可避となっている。

プログラム法では、後期高齢者支援金への全面総報酬割導入や被用者保険における標準報酬月額の引き上げなどの検討事項が示されているが、世代間の負担の公平性の確保や増嵩する医療給付の重点化・効率化に向けた施策については具体策に欠ける。保険料の増加に一定の歯止めをかける展望がないなかで、こうした施策のみを先行導入することは、再考すべきである。

2015年度には団塊世代がすべて前期高齢者となることを踏まえ、早急に、高齢者医療制度の見直しに向けた議論を開始すべきである。その際、「自助を基本としつつ、自助で賄いきれないリスクは社会保険料による共助、保険原理を超えたリスクへの対応や世代間扶助は税による公助」の考え方を徹底させ、前期高齢者も含め高齢者医療給付への税投入の拡大を図るべきである。併せて、前期高齢者に係る財政調整の問題点を見直すことが求められる。

なお、後期高齢者支援金への全面総報酬割導入に伴う協会けんぽへの国庫補助削減分を国民健康保険の財源対策に充当すべきとの意見もあるが、国民健康保険と被用者保険が、自立的な運営を通じ、それぞれの加入者の特性に応じて保険者機能を発揮する体制を維持すべきであり、国民健康保険の財源対策を被用者保険が肩代わりすることとなる提案には反対である。

2.医療給付の重点化・効率化の推進

医療保険財政の持続可能性を確保するためには、まずは、自助の観点から、個々人が自らの健康維持増進や疾病予防に努めることは当たり前という、セルフメディケーションの認識が広まることが重要である。加えて、医療給付の重点化・効率化が不可欠である。

後発薬の使用促進や診療報酬・療養費の不適切事例に対する指導・監査の徹底など足元の適正化策を着実に進めつつ、医療機関の機能分化や在宅療養の促進を図る観点から外来・入院に対する給付を見直すなど、公的保険の給付範囲を改めるべきである。

さらに、医療のICT化を通じ、医療の標準化、医療機関間の機能分化と連携、地域ごとの医療ニーズを踏まえた医療資源の適正配置・有効活用を進めるなど、医療費を適正化する施策を推進することが必要である。(別紙参照

3.データを活用した保健事業の充実

上述の通り保険者は厳しい運営を迫られており、保健事業の充実には困難を伴うものの、医療費適正化に向けて保険者機能を発揮し、レセプトデータや特定健診・特定保健指導のデータなどを活用しつつ、効果的な保健事業を展開することが期待される。

事業主としても、従業員の健康維持増進や疾病予防を重要な課題として位置づける「健康経営」の推進が重要であり、健康保険組合が策定・実施する「データヘルス計画」などの保健事業に積極的に協力することが求められる。

以上

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