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Policy(提言・報告書) 経済連携、貿易投資 B7コミュニケの主要ポイント ~持続可能な世界に向けた産業イノベーション~

("Summary: Key Recommendations of the B7"の抄訳)
2015年5月20日

Industrial Innovation for a Sustainable World
Recommendations from the B7 to the G7

B7は、G7が、世界経済が直面している喫緊の課題の解決に向けて努力していることを歓迎する。

投資と経済成長の促進

近年の金融・経済危機は脱したものの、G7各国は、引き続き、必要な構造改革の実施、健全な財政政策の継続、現実的な投資・成長戦略の追求に取り組むべきである。

(提言)

  • 各国政府に対し、公共および民間投資に対する障壁やボトルネックの解消を求める。
  • 中期的にファンダメンタルスが脆弱な状況に見合ったマクロ経済政策が必要。
  • より包括的な観点から、研究、開発、イノベーションのための投資のフレームワークを見直すことが必要。

世界貿易の推進

世界中で経済成長と雇用の創出を実現するために、自由でルールに基づいた貿易が果たす役割は大きい。特に、複雑化し拡大し続けるグローバル・バリューチェーンにより、関税障壁を低減することの重要性は一層増している。さらに行政や税関手続の効率化も重要である。B7は未だに保護主義的な傾向が見られることを残念に思う。

(提言)

  • WTOドーハ・ラウンドを成功裏に完結させるためのG7の努力を強く要請。
  • さらに、WTOのTFA(貿易円滑化協定)をできるだけ早期に発効させるべき。G7各国は率先して批准し範を示すべき。
  • WTOと整合的であり、かつグローバル・バリューチェーンを推進するようなFTAを推進すべき。

持続可能なグローバル・サプライチェーンの促進

各国の経済は相互の結合関係や依存関係を深めている。グローバル・サプライチェーンに参加することは、国家・企業双方にとって、生活水準の向上、生産性の向上、新たな技術の獲得、雇用機会の拡大、より多様で強靭な経済といった貴重な機会を提供するものである。持続可能なグローバル・サプライチェーンは、企業にとっては追加的なオプションではなく核となるものである。持続可能性のための投資は、リスクの低減、投資条件の安定性向上などの利益をもたらす。B7は、労働環境の安全性と生産国における環境基準の改善が必要であることについて合意している。

(提言)

  • サプライチェーンにおけるdecent work(働きがいのある人間らしい仕事)のための労働条件に関するG7のイニシアティブは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に掲げられた3本の柱「保護、尊重、救済(Protect-Respect-Remedy)」に従うべき。
  • G7はOECD多国籍企業ガイドラインにOECD非加盟国を追加する努力をすべき。
  • B7は、原則として、ファンドが一定の条件を満たすのであれば、ドイツ政府が提案する自発的な「ビジョン・ゼロ・ファンド」#2の構想について議論することにはオープン。ただし慎重な設計が必要。

資源の有効活用の促進

天然資源を活用することにより、人類は例を見ない繁栄と生活水準を実現することができた。しかし、化石・鉱物資源をより効率的に配慮して活用することが至上命題である。2010年以降の資源価格の低下に甘んじていてはいけない。

(提言)

  • G7の政府は、ターゲットを絞った自発的なNational Resources Partnership Program#3に官民共同で取り組むことを通じて、革新的な製品・製造工程の開発やその応用のためのビジネス自身の努力を支援すべき。
  • 中小企業の生産工程における原材料の効率的な利用に関する支援を拡充すべき。
  • 貿易を歪曲するような資源政策(原材料輸入に対する補助金、禁止的な輸出関税、厳格な輸出クオータなど)に対し、G7のより強力なアクションを求める。

エネルギーの有効活用と気候変動対策の推進

責任ある形で資源の効率的な利用を図りながら、経済的に調達しやすくクリーンで安定的なエネルギーの供給を確保することは、持続可能な経済成長を地球規模で実現するために重要である。予見可能で透明性の高い政策とグローバルマーケットにおける公平な競争環境は、効果的な気候変動対策のために不可欠である。これらは、新たな技術の開発に向けた企業によるさらなる研究開発投資の促進にも資することとなる。

(提言)

  • G7は、本年末にパリで開かれるCOP21において、すべての主要排出国が参加する合意の実現に向けて建設的な取組みを進めるべき。
  • G7は、省エネ技術の普及のため、規制障壁をなくすとともに、既存のファイナンスの仕組みを活用すべき。
  • B7は、エネルギーの有効活用に関するネットワークの創設を歓迎。同ネットワークでは、生産工程におけるエネルギー効率改善のアイディアを共有し、それを実現するための方策を議論。

ヘルスケア分野でのイノベーションの支援

持続可能でより包括的な経済成長と安全保障を実現するために、健康人口は不可欠である。最貧国がより多くの健康上の課題に苦しむのが常である。病は経済成長と持続的な発展に対する深刻な障害である。特に、薬剤耐性菌およびいわゆる「顧みられない熱帯病(NTD#4)」について、緊急の取組みが求められている。G7とB7はこれらの課題解決に重要な役割を果たす。

(提言)

  • G7各国政府は、健康に関する公共投資や民間投資が社会にもたらす多大な価値を認識し、持続可能でコスト効率的なヘルスケアへのアクセスを提供するべく、ヘルスケアの課題解決につながる開発において、グローバルなリーダーシップを発揮すべき。
  • G7は、薬剤耐性菌対策において、途上国とパートナーシップを組んで取り組むべき。
  • GFATM#5の創設は、エイズ、結核、マラリアなどの伝染病に対するグローバルなキャンペーンとして有効であるが、その中にNTDが含まれていないことは問題。早期に解決すべき。
以上

  1. "Summary: Key Recommendations of the B7"の抄訳
  2. 先進国等の多国籍企業が中心となって、劣悪な労働環境にある途上国等の取引先企業の労働事故を防止するため、労働環境改善や人材育成等を目的としたファンド構想。ドイツ等が中心になって設立を提案。
  3. 国家レベルでの資源の有効活用に関するパートナーシップ・プログラム。
    日本では、資源のリサイクルや有用金属の回収などに着目して策定された「循環型社会形成推進基本計画」が該当すると考えられる。
  4. Neglected Tropical Disease:熱帯地域、貧困層を中心に蔓延している寄生虫、細菌感染症のことで、世界中で10億人以上が貧しい生活を余儀なくされ、健康な数百人以上が生活を脅かされている。これらの感染症は個人の貧困な状況を長引かせ、蔓延させるだけでなく、これら地域社会の貧困もまた悪化させ、長期化させることにつながっているとされている。WHOが、デング熱、狂犬病、トラコーマ、ハンセン病など17の疾患を指定。
  5. Global Fund to Fight HIV/AIDS, Tuberculosis, and Malaria:HIV/AIDS、結核、マラリア対策のためのグローバルファンド

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