Policy(提言・報告書) 産業政策、行革、運輸流通、農業  Society 5.0に向けた電子政府の構築を求める

2017年2月14日
一般社団法人 日本経済団体連合会

1.はじめに

経団連は、GDP600兆円経済とアベノミクスの再加速に向けた重要施策として、成長戦略(日本再興戦略2016)の「官民戦略プロジェクト10」の具体化・実行に取り組んでおり、なかでもICTを最大限に活用し幅広い産業構造の変革、働き方やライフスタイルの変化を促すとともに産業競争力強化につなげる「Society 5.0(超スマート社会)」を重視している。

Society 5.0においては、収集された多種多量なデータの解析等を通じて新たな価値を創出し、個人の生活の質的向上や社会的課題の解決に資することが重要となる。データが付加価値の源泉となることを踏まえると、社会全体でのデジタル化の推進が不可欠であるが、行政分野において、紙を前提とした手続やそれに伴う文書保存等が存在するため、行政内部でのコスト削減が進まないことに加え、民間側もそれに合わせた対応が必要とされ、結果的に国全体の生産性向上を阻害している。

このため、行政分野のBPR(Business Process Re-engineering)と電子化は新しい国づくりに向けた重要課題であり、その基盤となるマイナンバー制度の活用・拡充が不可欠である。

わが国においては、昨年1月にマイナンバー制度が開始されたことに加え、年末の臨時国会を経て「官民データ活用推進基本法」が公布・施行され、本年7月からはマイナポータル(情報提供等記録開示システム)や情報提供ネットワークシステムの運用が予定されるなか、行政の業務プロセスの一部分を取り出してオンライン化を行うにとどまらず、国・地方を通じた電子化により、既存の制度・業務フロー・慣行等の抜本的見直しを視野に入れた検討が可能となり、本格的に電子政府の構築に取り組む要件が整いつつある。

あわせて、成長戦略においても、生産性革命の実現に向けた「新たな規制・制度改革メカニズムの導入」が盛り込まれた。ここでは、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すため、規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に進める新たな規制・制度改革手法を導入し、事業者目線で規制・行政手続コストの削減に取り組む方針が示された。これに基づき、昨年9月に発足した政府の規制改革推進会議では、行政手続部会を新設し、事業者ニーズの把握や諸外国における行政手続コストの削減手法を踏まえた検討を進めているほか、投資等WGにおいて、「デジタル社会進化のための規制の徹底改革」を重点課題と位置付けて検討を開始している。

こうした状況のもと、経団連として行政改革の視点を基本スタンスとし、国民に支持される電子政府の構築を求める提言を行う。

2.行政の電子化をめぐる状況

これまで行ってきた電子政府に関する経団連提言#1を受け、2012年には電子政府の構築を中長期的に指揮する専任統括責任者として政府CIOの設置が実現し、以降の4年間において、行政情報システム改革(行政情報システムの棚卸しを通じたシステム数削減・統合、運用コストの引下げ、政府・地方自治体におけるクラウド技術の活用促進等)の推進や、マイナンバー制度の導入が実現したことは、大いに評価できる#2

一方で、申請・届出等の手続のオンライン化は進んだものの、利用率が低調な分野#3がみられるほか、内閣府と経団連が共同で実施した調査では、行政手続の煩雑さに起因する負担感が多く指摘されており、事業者側のコスト増や事業展開のスピード低下といった課題の解決には至っていない。

【表】事業継続・拡大時における手続の負担
負担に感じている手続負担に感じていること
① 調査・統計に対する協力…47.8%
  • 提出書類の作成負担が大きい#4
  • 申請様式の記載方法、記載内容がわかりにくい
  • 同じ手続について、組織・部署毎に申請様式が異なる(例えば自治体毎、地方部局毎等)
  • 手続のオンライン化が全部又は一部されていない#5
  • 手続のオンライン化はされているが使いにくい#6
② 社会保険に関する手続…46.7%
② 従業員の納税に係る事務#7…46.7%
④ 地方税#8の申告・納付…45.7%
⑤ 国税#9の申告・納付…44.6%
⑥ 営業の許可・認可に係る手続#10…40.5%

出所:規制改革推進会議 行政手続部会(2016年12月20日)
経団連提出資料「『事業者の規制・行政手続簡素化に関する調査』結果報告(速報)」より作成
※全順位は本提言付録を参照

電子化推進の目的は、単なる行政内部のコスト削減にとどまるべきものではなく、効率性や透明性向上を通じた国民生活の利便性向上や安心できる社会保障制度の確立、さらには公共データの産業利用による新産業・新事業の創出等、わが国の経済社会、国民生活の活性化を図り、国際競争力強化に結び付ける視点が重要である。

こうしたなか、行政の電子化推進施策は、マイナンバー制度の積極活用を中核に据え、国民・事業者目線での規制・行政手続コストの削減を通じた利便性・生産性向上、国民に信頼されるオープンガバメントの構築、超高齢社会や加速するグローバル化に対応できる国・地方の連携推進を重視しながら、打ち出すことが必要となっている。

政府においては、行政手続の電子化に向けた検討の基本方針として、①デジタルファースト#11、②コネクテッド・ワンストップ#12、③ワンスオンリー#13の一体的実現を打ち出している。今後はこうした原則に基づき、利用者目線でビジネス環境の整備#14に取り組むとともに、国民に支持される電子政府を構築することが重要である。

3.新たな電子政府の構築に向けて必要な視点

(1) マイナンバー制度の積極活用

個人番号・法人番号が導入されたことにより、行政機関を跨いで個人・企業を一意に特定する共通コードが付与されたことに加えて、本年7月からは国の機関間ならびに、地方自治体間の情報連携が開始される見通しである。こうしたなか、電子政府の基盤であるマイナンバー制度を積極的に活用する視点が重要である#15

(2) 直面している課題

これまでの行政電子化の取組みが十分でないと考えられる理由として、以下が挙げられる。

  1. 電子化の効果を引き出す前提となる本質的なBPRが不十分
    (本質的なBPR:既存のプロセスや前例に捉われない業務フローやルールの再構築)
  2. 各省毎の取組みによる全体最適の欠如
  3. 国と地方の連携不足
  4. 行政内部で一元的に電子政府を企画・立案・実装する専門人材の不足
  5. ユーザビリティ・アクセシビリティの視点の不足
    (全ての国民にとっての使いやすさ)
  6. 技術革新を踏まえた規制改革の実績不足

行政においては、国民に対するサービス提供主体としての認識を持ち、上記課題の解決への取組みを通じて国民の信頼を一層高めることに努めるべきである。

4.国民に支持される電子政府の構築に向けた達成目標

経団連は、電子政府の進展度合に応じて3つの達成目標を設定した。各目標において、求められる取組み、実現するサービス、効果を整理すると以下の通りである。

(1) 2020年達成目標:国・地方を通じたデータ基盤#16の強化

求められる取組み
  1. 行政機関間のデータ連携推進
  2. 対面・書面原則からの転換(紙から電子へ)
    • 「官民データ活用推進基本法」に基づき、行政運営の簡素化及び効率化に資するICTのさらなる活用のために法改正が必要となる関連法制度の全数調査。特に、紙の作成や保存を義務付けている法令の網羅的な洗い出しを政府横断的に実施し、改正に取り組む。
    • システムで用いる漢字について、民間と行政の情報連携に際して過度の負担にならない範囲とするよう検討#17
    • 国・地方を通じた「システムの標準化」「クラウドファースト」の宣言と実行。
  3. 行政機関等の手続に関するBPRの徹底
    • 出生、引越、退職・転職、死亡等のライフイベントに対する各種手続に係る国民・事業者、行政機関等のステークホルダーの現状分析(手続の必要性、手続に必要な条件や作業内容、全体フロー、かかる時間とコスト等)と公開。
    • 上記を踏まえ「電子的処理の原則#18」や「行政機関確認の原則#19」等に基づく将来像と実行計画の提示。
  4. 行政手続の自動化・可視化の推進、行政業務の透明性確保
  5. 国・地方を通じたセキュリティ対策の強化
  6. 政府IT人材の高度化(育成・確保等)
  7. マイナンバーカードの利活用促進
  8. マイナンバー(個人番号)そのものの取扱規制の緩和
  9. 法人の実在性・実体性を証明する法人インフォメーションの充実
  10. マイナンバー制度の活用・拡充に関する政府広報の強化
実現するサービス
  • 行政手続の簡素化・効率化・ワンストップ化
  • ワンストップ窓口を通じた許認可申請等の処理状況の可視化
  • 各種資格等の更新業務のオンライン完結
  • プッシュ型行政サービスの積極的展開
  • マイナンバーカードによる各種公的証明書の代替
  • JPKI、電子証明書、生体認証による押印及び署名・捺印の代替
  • JPKI機能をスマートフォンに搭載し活用
  • 引越ワンストップサービス等の提供
効果
  • 利用者目線による規制・行政手続コストの削減
  • ネット環境下での安全・安心な取引の実現
  • 行政に対する国民の信頼性向上(国民に対する透明性・予見可能性確保と情報セキュリティマネジメントの両立)

(2) 2023年達成目標:官民データ連携で利便性・付加価値が向上

求められる取組み
  1. 民間を含めたデータ連携の拡大(API#20の公開、マイナポータルへの接続等)
  2. 戦略的ユニバーサル・デザイン(アクセシビリティ対応等を、超高齢社会に突入している日本のアドバンテージとして捉え、ユニバーサル・デザインに取り組むこと)
  3. 国・地方・民間の垣根を越えた連携による行政サービスの再設計
実現するサービス
  • 民間による行政サービス関連アプリの開発等、新産業・新事業の創出
  • 死亡等のライフイベント全般に係る情報の官民データ連携による民間を含めたワンストップサービスの提供#21
効果
  • 民間アプリの活用によるユーザビリティ・アクセシビリティの向上
  • 全ての国民が使いやすい電子政府システムの実現による利用者の増加
  • 死亡等のライフイベントの際の行政手続負担の軽減
  • 事業活動の生産性向上に伴う競争力強化

(3) 2026年達成目標:公共データを活用した予測・分析型の政策立案・行政サービス提供

求められる取組み
  • 行政機関等が蓄積・保有する公共データの共有・活用を通じたデジタル起点の政策立案と実行の徹底
実現するサービス
  • 国民各層のニーズに応えるきめ細かな政策立案
  • データに基づく事前予測・対策型の行政サービス
効果
  • 市民参加型(双方向型)で地域課題に取り組み、解決(自治体レベル)
  • 国民と協働した行政課題への対応(国民レベルでのきめ細かい課題の発見を起点とした行政事務の質の向上と効率化)
  • 社会的課題(例えば、高齢化に伴う社会保障支出の増大等)への対応

5.電子政府構築に必要な施策(10の提言)

これまで指摘してきた新しい電子政府の構築に向けて、以下の提言を行う。

(1) 国民に支持される電子政府構築のためのトップダウンの体制整備

提言① 総理(官邸)の強いリーダーシップに基づくトップダウンでの推進

電子政府の先進国家は、政府横断的な権限と責任を伴う推進体制を確立しており#22、国家元首直属の専任組織を設置し、府省庁間の意思調整の最終局面において決定を下すことも行われている。

わが国においては、「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部令」に基づき、内閣官房長官を議長として関係国務大臣、政府CIOから構成される「eガバメント閣僚会議」を開催しているが、2014年6月の設置以降、開催実績が少なく、公表資料を見る限りにおいて、電子化と業務改革の同時・一体的改革を機動的かつ強力に進めているとは読み取り難い。

そこで、eガバメント閣僚会議を活性化させ、政府横断、国・地方の連携を進める統率力と調整力を持つ司令塔として再定義すべきである。

なお、電子政府の構築を通じて行政改革を進める観点から「行政改革推進会議」との合同会合の開催や検討にあたっての密な連携も重要である。

提言② 電子政府戦略の立案・実行体制の強化、人材の育成・確保
②-1 戦略立案・実行体制の強化

電子政府の構築には、適切な戦略に基づく実行体制の整備が不可欠である。現在、内閣総理大臣を本部長とする「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)」のもと、「内閣情報通信政策監(政府CIO)」「内閣官房IT総合戦略室」「総務省行政管理局」等において、マイナンバー制度の活用をはじめとする行政事務の高度化・効率化を推進しているが、各省毎の取組みではなく、全体最適の視点から取り組む必要がある。

例えば、各府省のシステム予算要求について、政府CIOの承認を必要とするとともに、府省間のデータ連携に対して、政府CIOに強い権限を持たせるべきである。

戦略の立案・実行にあたっては、地方自治体を含む形での工程表を策定するとともに、KPI(Key Performance Indicator)のほか、責任主体を明確に設定して進捗管理を行い、達成に向けて継続的な改善を図ることが重要である。

②-2 人材の育成・確保

行政情報システムの設計・構築や、データの高度利用・分析などデジタル起点の政策立案・実行を実現するためにも、政府IT人材の育成・確保は重要な課題である。

わが国においては、公務員人事制度により、電子政府政策の立案と実務の双方に通じた専門家が政府内部で育ちにくい状況にある。また、民間人の登用を行ううえでも、①任期付任用や非常勤職員での短期雇用、②CIO補佐官の限定的な権限、③離職後の再就職先制限(調達先企業への再就職、再就職先企業の入札参加)等が課題として指摘されている。

Society 5.0を見据え、官民の流動性を高めた公務員人事制度に加えて、高度かつ多様な専門性を備えた人材を集めて、政府CIOのもと、電子政府戦略の企画・立案・実行を担う専門組織の設置を検討すべきである#23

提言③ 官民データ活用推進基本法の着実な推進・拡充
③-1 紙から電子への原則転換の法制化

電子政府の構築にあたっては、オンライン化にとどまらず、対面・書面原則の転換や、既存の業務プロセス自体の見直し(BPR)が不可欠である。

昨年の臨時国会を経て公布・施行された「官民データ活用推進基本法」には、「基本的施策」として、「行政手続(申請・届出等)に係るオンライン利用の原則化(第10条)」が盛り込まれ、経団連が要望してきた、「紙から電子へ」の原則転換を実現する基本法として評価できる。今後は、基本法の原則に従い、関連する法制度の全数調査を行うとともに必要な改正を行い、さらに、法律上に規定のないものは具体の手続について別途政省令等で定めるものとすべきである。あわせて、国の施策と地方自治体の施策との整合性の確保等には最大限配慮するものとし、規則や条例等による行政機関毎の個別の規制強化については、相当の理由がない限り認めないことも検討すべきである。

加えて、複数の行政手続をひとつにまとめる「ワンストップサービス」や透明性の高い政府に向けたプッシュ型サービスを実現するためには、地方自治体を含む行政機関間の情報連携や業務の電子化、あるいは自動処理を原則とすべきである。

なお、基本法に盛り込まれた、政府・都道府県・市区町村による「官民データ活用推進計画」の策定にあわせて、必達目標を含む推進工程表の可視化、進捗状況の評価・改善プロセスの整備も重要である。

③-2 基本法に基づく業務改革と電子化の義務付け

業務プロセスの見直しにおいては、横串原則に基づく政府統一的な対応が必要である。府省庁毎に個別の行政手続を取り出して、それぞれ個別に見直しを検討する手法では、国民の実感を伴う負担軽減にはつながりにくい。

先述の内閣府と経団連の共同調査においても、事業者から負担が大きいものとして指摘された事項のなかには、電子化そのものを求める声も多く寄せられた。こうした状況に鑑み、行政手続において、電子的処理が可能なものは電子的に処理する(申請の届出から決定等の通知までのプロセスを自動化する)ことを行政機関の義務として規定するなど、業務改革(BPR)と電子化を推進する法制度上の裏付けが不可欠である#24

具体的には、以下を法的に位置付け、全ての行政作用法において、原則の転換を実現すべきである。

  • 行政文書の電子化
  • 行政機関に出向かず申請を可能とする手段の提供
  • 電子署名の使用による本人確認
  • 行政情報の共同利用(行政機関が保有する情報を申請者に求めないこと)
  • G to C、G to Bのプッシュ型情報提供の可能化
    (申請主義から情報提供型行政サービスへの転換)
  • 電子化への重複投資の禁止と標準化の促進(政府IT投資管理の強化)
  • 電子化の効果を引き出すBPRの実施(電子的処理による既存業務の効率化)
  • 事業単位での行政評価と公開(単年度の取組みに終わらせず、常に改善)
  • 公務員のICTスキルの向上(公務員の発案によるICTを活用した業務改革)

(2) マイナンバー制度の積極活用

提言④ 国民生活の質的向上のためのマイナンバー制度の見直し等
④-1 マイナンバーの利用範囲の拡大

現在、マイナンバーの利用範囲は、税・社会保障・災害対策の3分野のうち、法律で定められた事務に限定されている。また、これら利用範囲のうちでも、マイナンバーを介して連携可能な情報が限られており、効果は限定的である#25

法施行後3年を目途に行われるマイナンバー法の見直しに際しては、利用範囲の拡大#26に加えて、既に利用範囲とされている行政事務に関しても、取り扱う情報の見直しを行い、行政機関間のバックオフィス連携による、一層の事務の簡素化・効率化に取り組むべきである。

④-2 特定個人情報取扱規制の見直し

特定個人情報(マイナンバーをその内容に含む個人情報)の取扱いについては、事業者に対して厳格な安全管理措置を講じる義務が課されており、その遵守に係るコストや心理的負担が大きなものとなっている。このような状況下では、マイナンバーカードの普及が進まない#27ことも考えられるため、過度に厳格な安全管理義務について、保護と利活用の両立の観点から、適切なものとするよう措置を講じるべきである。

④-3 情報連携基盤の対象範囲の拡大

本年7月より、行政手続に必要な情報は、情報提供ネットワークシステムを介して行政機関の間で授受されることになる。しかしながら、その対象は番号法や地方自治体の条例、特定個人情報保護委員会規則に基づくなど、限られた範囲となっている。行政機関間の情報連携のさらなる拡充を可能とするよう、必要な制度改正等を検討すべきである。

あわせて、行政機関が保有する情報を対象とする官民データ連携のあり方についても検討すべきである。

④-4 マイナンバーカード(JPKI#28機能を含む)の利活用促進

マイナンバーカードに搭載されたICチップの空きエリアには、民間事業者がサービス提供を行うためのアプリケーションの搭載が可能であり、この機能を有効に活用して日常生活におけるカードの利用場面を増やすことが必要である。

日本再興戦略2015においても、2019年までにスマートフォンから直接マイナンバーカード(JPKI機能)を利活用できる環境を実現するため、技術開発や制度設計を行うとされている。個人が常時携帯するスマートフォンを通じて、安全・安心なオンライン手続・取引を可能とするなど、国民の利便性向上にむけて着実な検討を進めるべきである#29

利用場面を増やす観点からは、2018年から実施が見込まれる健康保険証資格確認機能に加えて、マイナンバーカードを活用して行政機関への振込みをATM等で可能とするなどの機能拡充を図るべきである。さらには、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおける競技場への入場や、入場券の購入など、大規模イベント時における間違いのない本人確認の手段としての活用促進も望まれるところである。

④-5 マイナポータルの利便性向上

本年7月からマイナポータルが開設・運用開始され、G to C(国・自治体から個人)の直接の連絡窓口が開かれることにより、新たなサービスの展開が期待されている。

既に、行政機関等が保有する自分の特定個人情報の確認(自己情報表示)、行政機関等から個人に合ったきめ細かなお知らせの確認、地方自治体の子育てに関するサービスの検索やオンライン申請(子育てワンストップサービス)、公金決済サービス等の提供が順次予定されているが、将来的には、結婚等による改姓手続や死亡関連手続のワンストップ化や、健康や防災など安全・安心に関連する民間サービスのお知らせ、ソーシャルメディアとの連携、人工知能やFintechなど最新技術・サービスとのコラボレーションなど、国民の利便性向上のため、さらなる進化を図ることが重要である。

また、マイナポータルの機能拡充も重要である。例えば、給付金の受け取りや入金がオンラインで完結できれば、申請者の利便性向上、地方自治体による給付人の口座照会に係る費用等の節約、行政業務の自動化を通じたコスト削減も可能となる。マイナポータルに個人の口座情報を事前登録することにより、給付金等の申請手続の際に口座番号の入力を不要にすることを可能とすべきである。

あわせて、マイナンバーを介した特定個人情報の利用履歴について、マイナポータルを通じて本人(個人)に開示する範囲を拡充することを検討すべきである#30

④-6 法人番号の活用

本年1月より、政府が保有する法人活動情報を一括検索・閲覧・取得できる「法人インフォメーション」の運用が開始されたが、利用者利便の向上のため、政府保有情報のさらなる蓄積と活用を図るべきである。

加えて、法人番号がビジネス上の信頼できる情報源として機能するためには、法人の実在性と実体性を確認する手段が提供されるべきである#31

そこで、例えば、法人税申告・納税の有無に関わる情報を法人インフォメーション上に反映することを検討すべきである。

(3) 国・地方自治体の一体改革

提言⑤ 国・地方を通じたBPRの徹底

電子化の効果を極力引き出すためには、対面・書面原則に基づく業務プロセスの見直しや、組織を超えたBPRへの取組みが不可欠である。

その際、国・地方を通じた業務改革の視点を持ち、業務の標準化を図り、迅速かつ網羅的な取組みを行うことを通じて、規制・行政手続コストの削減を達成すべきである。

とりわけ、地方自治体においては、申請書類等の様式や制度運用がそれぞれ異なる事態が生じている。こうした状況は、広域の事業展開を図る事業者にとって規制・行政手続コストを高める要因となっている。国民や事業者の立場からは、地方自治体毎の規制にあわせた事務処理を行わざるを得ない状況を見直すことを求めたい。このため、国の主導のもと、国・地方を通じた共通化・標準化に取り組むことや、地方自治体で共通する事務については、国で標準システムを整備し、クラウドで提供する等の施策について検討すべきである。

将来的には、全国規模で自治体クラウドの統合・集約#32を図り、国全体でのシームレスなデータ連携を推進すべきである。

提言⑥ 行政情報システムのさらなる見直し・統合、セキュリティ対策の強化
⑥-1 システム改革の推進

これまで政府が取り組んできたシステム改革の成果を踏まえ、引き続き一層の改革を求めたい#33。例えば、クラウドファーストの基本方針の下、保有するデータの内容に応じてパブリッククラウドとプライベートクラウドを使い分ける明確な基準を確立すべきである#34

⑥-2 セキュリティ対策の強化

機密情報の漏洩や不正アクセス等の防止を通じたセキュリティの確保も不可欠である。政府機関への標的型攻撃の脅威件数が増加するなか、政府においては、昨年3月に「サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針」を定めたほか、「内閣サイバーセキュリティセンター」(NISC:National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity)の人員や予算を増加するなど、サイバーセキュリティ確保に向けた推進体制を強化している。

引き続き、セキュリティを担う人材の育成・確保に努めるとともに、地方自治体を含めたセキュリティ対策全体の底上げを図るべく、NISCや総務省を中心に取組みを強化すべきである。

加えて、個人情報に対する不正閲覧や覗き見等の行為を厳罰化するなど、政府のデータ管理に対する国民の信頼を高める措置を講ずるべきである。

提言⑦ 地方における電子化促進支援の拡充

地方行政は厳しい財政・人員制約に直面しており、窓口に配置できる職員数が限られるなど、住民サービスへの制約が生じている地方自治体もある。高齢化・過疎化が進んだ地域においては、住民が手続のために役所に足を運ぶことが負担となっている。

こうした状況においては、電子化による効果が期待できるところであるが、地方自治体が個別、独力でシステム構築や改修等を行うのは非効率である。政府による電子化促進支援の観点から、国・地方を通じたシームレスサービスの実現のためのBPRのモデルケースを確立すべきである。

加えて、財政面(交付金等)での支援を行いつつ、達成すべき電子化水準の設定と地方自治体への浸透・徹底を図るとともに、官民による共通アプリケーションソフトの開発・提供等についても推進すべきである。

(4) 世界を先導する電子政府の実現

提言⑧ ビジネス機会の提供

2016年度の国連「世界電子政府ランキング」で1位となった英国では、2013年にGovernment Digital Service(GDS)を設置し、利用者中心のデザイン思考で行政サービスのデジタル化を推進している。2014年からは、公共デジタルサービスの調達サイトである「Digital Marketplace」を運営しており、中小企業を含む国内外のICTベンダーからのオープンな調達を可能としている。

わが国においても、国・地方を通じた行政の電子化推進に必要な民間技術やアプリケーションを積極的に採用できる仕組みを導入すべきである。

提言⑨ 国際連携への取組み

電子政府の先進国である英国、エストニア、ニュージーランド、イスラエル、韓国の5カ国は、2014年より「Digital-5 電子政府長官会議(D5会議)」を開催している。

昨年は韓国を議長国として第3回の会議が開催され、「リーディング・デジタルイノベーション」をテーマに電子政府の未来や国家間のデジタル格差の是正方法等に関する議論を行い「革新的なデジタル政府政策と優秀事例の共有」「加盟国のデジタルサービス改善及び共同プロジェクトにおける協力方策の模索」等を盛り込んだ釜山宣言をまとめている。

また、英国を中心に2011年に8か国(ブラジル、インドネシア、メキシコ、ノルウェー、フィリピン、南アフリカ、英国、米国)で立ち上げた「Open Government Partnership」のように、市民と政府が協力し、オープンな政府を目指す多国間の取組みも存在している。

わが国においても、このような国際連携に積極的に参画し、諸外国の経験を踏まえ、より効果的かつ世界基準の電子政府構築を目指すべきである。

提言⑩ 電子政府に関する国民理解の促進

マイナンバー制度を新たな社会基盤と位置付け、電子政府を構築するためには、国民の理解を得ることが重要である。また、データを活用した新たな行政の展開にも国民の支持や参加が求められる。こうした観点から、政府においては、ICTの高度利用による国・地方を通じたBPRと行政サービスの高度化が国民生活にもたらす利便性、効率性、安全・安心について、積極的かつ継続的にわかりやすい広報活動を行うべきである。

6.おわりに

成長戦略に盛り込まれた生産性革命を実現するためには、ICTの利活用を梃子とした行政改革に取り組み、既存の制度・業務フロー・慣行等を抜本的に見直すことが不可欠である。行政業務の本質的なBPRの実施にあたっては、単に手続の電子化にとどまらず、行政機関間で保有するデータを共有することや、官民データ連携を見据えて取り組むことが重要である。これにより、Society 5.0に向け、質の高いデータから構成されるビッグデータの確保やその活用が図られ、GDP600兆円経済に向けた原動力となることが期待される。

また、本質的なBPRには複数の法令改正が必要となるため、国家機関の全体最適の観点から法令全般を俯瞰した制度設計が求められる。行政・司法・立法が一体で電子化を推進することで、国全体としてのガバナンス機能の強化が図られ、生産性革命の実現に寄与すると考えられる。

さらに、事業者目線での規制・行政手続コストの削減に向けて、規制改革、行政手続の簡素化、IT化の一体的推進を実現することが重要である。そのためにも、具体的な手続の見直し(負荷軽減や利便性の向上)にプロジェクトとして取り組み、事業者にとってわかりやすい効果を打ち出していく必要がある。

こうしたなか、マイナンバー制度の開始や官民データ活用推進基本法の公布・施行等を契機として、Society 5.0時代の国民に支持される行政を実現することが望まれる。政府においては、電子政府の構築を新しい国づくりに向けた国家プロジェクトと位置付け、国民や事業者、民間有識者の声も重視しつつ、総理(官邸)の強力なリーダーシップのもとで政府横断かつ国・地方を通じて着実に取り組むべきである。

以上

【別紙】モデルプロジェクト

提言で述べた事項に取り組むことにより、利用者目線での様々な行政手続の負担軽減が可能になると考えられる。そこで、経団連として、以下の通りモデルプロジェクトを例示する。

プロジェクト①:行政-企業間手続の電子化の義務化

毎年5月に、企業には多くの地方自治体から従業員の住民税額決定通知が郵送で送付され、事業者には開封、確認、システム入力、従業員への配付、保管業務等が発生している。

2016年度の地方税法の改正により、特別徴収税額通知の電子送付が可能となった(民間側には、一定の提出枚数以上である場合、給与支払報告書等の電子データによる提出が義務付けられている)。しかしながら、現状、企業への当該通知書の電子送付を予定している市区町村は僅かである。

源泉徴収を適切に行うために、企業は多数の市区町村から郵送される膨大かつそれぞれ書式・様式の異なる特別徴収税額通知を、目視で確認・分類のうえ再入力を行う実務作業を負担しており、これらについて限られた日数で処理することが行政機関から求められるため、人手確保を含め、多大な負荷が生じている。紙も電子も正本として認められるにもかかわらず、一部の市区町村から「紙」による送付が続くことになれば、企業は「紙」の受領を前提とした事務負担を継続して持たなければならず、負担軽減につながらない。

そこで、全ての地方自治体に対して、特別徴収税額決定通知の電子送付を義務化すべきである。

プロジェクト②:企業の社会保険手続の簡素化

企業は従業員の社会保険手続の各種申請において、ハローワーク・日本年金機構、医療保険者それぞれに、同様の手続を重複実施する必要があり、申請には証明書類の添付を求められる場合も多いため、企業・従業員ともに大きな負荷となっている。

マイナンバー法に記載の通り、同一情報の重複提出を省くため、各市区町村が保有する情報(住民基本台帳、前年度所得総額、税制上の扶養情報及び被扶養者前年度所得総額、戸籍情報等)の行政間の情報連携を実現すべきである。具体的には住民が居住する市区町村への住所や氏名、婚姻等の届出をトリガーに、マイナンバー制度のインフラを活用して社会保険の関連組織へ情報を提供することで企業の申請手続を削減すると共に、企業の社会保険の申請先を一か所に集約しワンストップ化を実現すべきである。また、扶養申請等の個人申告は、個人が直接申請することで、以後の当該個人に関する重複した申請を不要とし、随時登録状況を確認することが考えられる。

プロジェクト③:記入済申告制度の実現

電子政府の先進国家では、官民のデータ連携が進み、ワンスオンリーの原則に立っている。例えば、医療費や社会保険料、生命保険料の控除額等、必要項目が記入済みの申告用紙がプッシュ型で国民に渡され、国民はその内容の確認・修正を行うことで税務申告が整うなど、負担が少ないものとなっている。

雇用主(特別徴収義務者)を介した「源泉徴収」ならびに「年末調整」においては、マイナンバー制度の導入を契機として、記入済申告制度を実現するなど、手続を見直すことも検討すべきである。

プロジェクト④:税金の納付是正の本人宛直接通知による迅速化

「扶養控除是正通知」は、扶養控除申請から約1年以上遅れて税務署から企業(源泉徴収義務者)に通知される。通知を受領した企業は、短期間で数年分の履歴を調査・報告する義務を負うが、当該通知に記載されるのは氏名のみであり、年末調整の繁忙期とも重なることから、本人特定や調査に多大な事務負荷が発生している。

そこで、マイナンバー制度における情報提供ネットワークによるバックオフィス連携を活用することで、市区町村が保有する「生計同一世帯情報」を税務署に共有するとともに、扶養控除是正通知を対象者本人のマイナポータル(電子私書箱)に直接通知する仕組みを構築すべきである。

これにより、迅速かつ確実に納付是正の対象者本人を特定し、早期に追納を促すことができる。加えて、企業や地方自治体の事務負荷が軽減する。

プロジェクト⑤:マイナンバー制度のインフラ活用による医療費助成等業務の効率化

  1. 1.医療機関・保険者等が患者・被保険者・被扶養者の難病認定・公費負担・生活保護等の対象状況を確認できる仕組みの構築

    地方自治体が条例で定める医療費助成制度は地方自治体により実施の有無・名称・対象者・窓口負担方法等が異なるとともに、社会保険診療報酬支払基金への医療費助成事業の委託状況により、レセプトへの記載の有無(窓口負担額、助成情報)が異なり、その対応による医療事務(医療機関、保険者)への負担が重い。また、医療機関や保険者にとっては、患者・被保険者等の難病認定・医療費助成・生活保護等の有資格状況の把握作業が煩雑であるほか、保険者においては、被保険者・被扶養者が実際に医療機関の窓口で支払った金額が確定できず、保険者が負担割合に関する情報を確認する必要があり、事務工数負担が大きい。

    そこで、マイナンバー制度のインフラを活用し、医療機関や保険者が資格情報を確認できる仕組みを整えることで、事務の効率化、的確な医療費の支払いが可能になると考えられる。

  2. 2.患者による医療費助成制度や難病認定に係る申請手続の簡素化

    医療費助成制度や難病認定に係る申請の手続では、医療機関での受診時に案内を受け、「地方自治体からの申請に係る住民票・課税証明書等申請必要書類の入手」「指定医療機関による診断書等の入手」「地方自治体への申請」と医療機関と地方自治体を複数回に渡り出向く必要がある。また年度ごとの更新であるため、毎年、作業が発生する。

    そこで、公的個人認証サービスなどマイナンバー制度のインフラを活用し、医療機関からワンストップで申請が行えるよう整備することで、申請手続や年度更新手続が簡便になり、患者の負荷軽減につながると考えられる。

プロジェクト⑥:事業者におけるJ-LISを通じた顧客の異動情報の取得

昨年1月に公的個人認証法(電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律)が改正され、総務大臣が認定した事業者も署名検証#35を行うことが可能となり、顧客の事前同意を得たうえで、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)を通じて電子証明書の有効性を確認することで、氏名変更や住所変更の異動有無を確認することが可能となった。

ただし、確認できるのは異動の有無のみであり、異動後の氏名・住所の把握は、顧客による申告が必要である。そこで、顧客の利便性向上と事業者の業務効率化のため、事前同意を前提に、顧客の異動情報を事業者が取得可能とすることを検討すべきである。

プロジェクト⑦:廃棄物処理法等関連法令に係る情報の電子化

政府として電子政府を強力に推進しようとするなか、廃棄物処理法の遵守はもちろん、資源の有効利用に取り組む観点からも、廃棄物処理法等関連法令に係る情報の電子化を推進すべきである。具体的には、廃棄物処理に関する許認可情報の電子化を通じた公開・一元管理、許認可の申請や各種報告等の手続の電子化、電子マニフェスト情報の連携を含めた廃棄物処理情報の管理などを進めるべきである。

廃棄物処理に係る情報の電子化により、地方自治体・排出事業者・処理業者等の手続を合理化できる。また、許認可情報を電子化・公開することにより、排出事業者が優良な処理業者を適切に選択できるなど、排出事業者責任を全うしやすくなる。さらに、環境省・地方自治体においても、不適正処理の排除に向けた施策を講じやすくなるなど、健全な循環型社会の構築が期待できる。

これらの実現に向けて整理すべき課題は多い。まずは、環境省が主体となって、本問題に関する検討会を設置し、循環型社会形成に向けた電子化の目指すべき姿を描いたうえで、課題や推進方策等について、検討すべきである。


【付録】「『事業者の規制・行政手続簡素化に関する調査』結果報告(速報)」

(2016年12月20日 規制改革推進会議 行政手続部会 経団連提出資料/PDF形式)

  1. 1.回答企業が負担を感じている手続(事業継続・拡大時)
  2. 2.負担に感じていること(手続別)(事業継続・拡大時)

  1. 「政府CIOの設置に向けた考え方」(2012年8月6日)、「情報通信技術の利活用による経済再生を目指して」(2013年1月22日)を参照。
  2. 国連が2年毎に公表する「世界電子政府ランキング」において、日本は2014年に6位に躍進(2012年は18位、2016年は11位)。なお、同ランキングの首位は12年と14年に韓国、16年は英国となった。
  3. 「オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針」(2014年4月)に基づく「重点取組対象分野」のオンライン利用率(2015年度)は、登記分野が6割強(66.3%)となる一方で、社会保険(8.7%)や雇用保険(11.9%)、労働保険(3.1%)など、さらなる利用促進が必要な分野も多い。
  4. 社内の事務作業(書類収集作業含む)や社外専門家への支払等
  5. 添付書類は紙、CD等で別途提出が必要等
  6. 紙で提出した方が手続が早く完了する等
  7. 所得税(源泉徴収、年末調整)、住民税(特別徴収)
  8. 事業税、都道府県民税、事業所税等
  9. 法人税、所得税、消費税等
  10. 変更申請、事業報告、届出等
  11. 原則、個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結
  12. 民間サービスも含め、どこでも/一か所でサービスが実現
  13. 一度提出した資料は、二度提出する必要がない仕組み
  14. 日本再興戦略では、世界銀行が毎年公表するビジネス環境ランキングで2020年までに先進国(OECD34カ国)で総合3位を目指すとしている。(2015年10月公表時で24位)
  15. 経団連提言「マイナンバーを社会基盤とするデジタル社会の推進に向けた提言」(2015年11月17日)を参照。
  16. 国・各地方自治体の保存するデータが情報提供ネットワークシステム上で円滑に連携することを想定(Data Exchange Layer)
  17. 例えば、情報処理推進機構(IPA)の文字情報基盤の準拠や、必要に応じて代替文字を使用した情報連携について検討することが考えられる。
  18. ここでは、「行政機関の主要業務は電子化されなければならず、電子的処理の可能な業務は、特別な事由がある場合を除き電子的に処理されなければならない」ことを想定。
  19. ここでは、「行政機関は特別な事由がある場合を除き、行政機関間に電子的に確認することができる事項を申請者に確認して提出するよう要求してはならない」ことを想定。
  20. Application Programming Interfaceの略。アプリケーションの開発者が、他のハードウェアやソフトウェアの提供している機能を利用するためのプログラム上の手続を定めた規約の集合を指す。個々の開発者は規約に従ってその機能を「呼び出す」だけで、自分でプログラミングすることなくその機能を利用したアプリケーションを作成することができる。
  21. 例えば、生命保険会社がマイナンバーを利活用できれば、①終身年金保険の支払手続に必要な生存確認の証明書類提出の省略化、②住所情報の確認による継続的なアフターフォローの実現、③マイナポータルを通じた保険会社からのタイムリーな情報提供等が可能になると考えられる。
  22. 国連電子政府ランキングでトップ3に位置する韓国では、行政自治部が大統領の指示に基づき、電子政府の司令塔として関係各省や地方政府との調整等を行う。
  23. 例えば、韓国の「情報社会振興院(NIA)」は数百人規模の修士号・博士号保有者を擁する専門機関として、電子政府戦略の立案に関する行政自治部(日本の総務省に相当)への助言や、省庁横断的なシステム管理、IT調達における技術評価、各省庁の職員の研修等を実施しており、同国の電子政府の構築に大きな役割を果たしている。今後は、IoT(Internet of Things)やクラウド、ビッグデータ、モバイル等の新たな技術を取り入れた複合型の電子政府を目指している。
  24. 官民データ活用推進基本法は、第10条で「手続における情報通信の技術の利用等」を原則としているほか、番号法は、第3条でワンスオンリー原則を打ち出している。これらを含め、電子政府の構築にあたり法的な裏付けが必要と考える。
  25. NPO法人東アジア国際ビジネス支援センター(EABuS)の提言「生活保護行政から見たマイナンバー活用に係る緊急提言」(2016年11月18日)では、生活保護法第29条に基づく調査で必要となる47項目のうち、番号法の規定によりマイナンバーで照会・提供が可能なものは17項目にとどまっていると指摘している。
  26. 例えば、2019年の法制化が視野に入っている戸籍事務への利用や、空家対策に向けた不動産登記への利用が考えられる。
  27. 総務省資料によると、昨年11月9日時点で、マイナンバーカードの申請受付数は1,182万枚、交付実施済数は909万枚にとどまっている。
  28. Japanese Public Key Infrastructure:公的個人認証サービス
  29. 電子政府の先進国家として知られるエストニアでは、取得が義務付けられている国民IDカードに、運転免許証や国民健康保険証、パスポート等の公的証明書が統合されているほか、電子投票やネットバンキング、店舗におけるロイヤルティーカードとしての利用も可能となっている。
  30. NPO法人東アジア国際ビジネス支援センター(EABuS)の提言「生活保護行政から見たマイナンバー活用に係る緊急提言」(2016年11月18日)では、マイナポータルで本人に開示されるのは他機関との連携(特定個人情報の「提供」)に限られ、行政機関内部における情報連携(特定個人情報の「利用」)については、記録の保存・開示等の規定が存在しないと指摘している。
  31. とりわけ、法人番号は、法人登記簿謄本に基づいて付番されており、国税庁法人番号公表サイトで閲覧することができるが、ここで得られる法人情報は、登記されている法人であることにとどまっており、実際に活動等を行なっている法人であるかの選別はできない。
  32. 2016年1月時点で、全国で56の自治体クラウドグループが存在。
  33. 韓国では、行政情報システム改革が進んでおり、各省毎の情報システムではなく、全国に2箇所存在する統合電算センターに各省庁の情報資源が集約され、統合的に運営・管理されている。その結果、コスト削減、エネルギー効率向上、サイバー攻撃への対応強化等の成果を挙げている。
  34. 現時点では、クラウドはプライベートクラウド(政府共通プラットフォーム)を意味し、より安価で使いやすいパブリッククラウドを使う基準がない。パブリッククラウドの利用を促進して経費の節減や小回りの利くシステムにするためには、両者の切り分けの基準が必要である。
  35. 電子証明書の有効性を確認すること