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Policy(提言・報告書) 税、会計、経済法制、金融制度 「民事訴訟法の改正に関する中間試案」に対する意見

2021年5月7
一般社団法人 日本経済団体連合会
経済法規委員会 企画部会

今般、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会が取りまとめた「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」は、単なる書面のデジタル化にとどまらず、新たな訴訟手続、新たな和解に代わる決定、訴訟記録の閲覧など、手続の迅速化および利便性向上に向けた重要な論点を含むものであり、中間試案に対する意見を述べる機会に感謝する。

我が国の民事裁判手続では、未だにファックスと郵送が主たる情報伝達手段とされており、通常のビジネス実務との乖離が甚だしい上、コロナ禍もあり、民事訴訟のIT化は直ちに実施すべき課題であることから、可能な限り早期の法改正を期待する。なお、手続のIT化に当たっては、なりすましの防止策、サイバーセキュリティ対策も十分に検討すべきである。

個別の論点に関しては、以下の通り意見を提出する。

1.「第1の1 インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合」について

訴訟実務の効率化の観点からIT化の促進が急務となっていることから、本人訴訟の場合も含め原則として電子情報処理組織を用いなければならないとする【甲案】に賛成する。その実現に向けて、まずは【乙案】のように、訴訟代理人があるときに電子情報処理組織の用いることを義務付け、段階的に全面的なIT化を目指すことも一案である。

2.「第2 訴えの提起、準備書面の提出」について

中間試案では、濫用的な訴えの提起を防止するための方策として、「訴訟救助の申立ての有無にかかわらず、訴えを提起する際には、一律に、例えば数百円程度のデポジットを支払わなければならないという規律を設けること」について、引き続き検討するとされているが、濫訴防止の観点から実効的なものとなるよう十分に検討してもらいたい。

3.「第3の1 システム送達」について

裁判所に届出をするメールアドレスは、裁判所以外は把握できないようにすべきである。

なお、一方当事者が外国にいる場合のシステム送達のあり方については、国際条約との関係について整理が必要となるため、今後十分な検討が求められる。

4.「第6 新たな訴訟手続」について

迅速な訴訟のために新たな訴訟手続を設けることに賛成であり、【甲案】および【乙案】に限らず、使い勝手のよい制度となるよう検討すべきである。

新たな訴訟手続の開始については、共同の申立てまで求める必要はなく、【甲案】のように、一方当事者が請求をして他方が反対しない場合に認めて差支えないと考える。他方、当事者にとっての予測可能性を高める観点からは、【乙案】のように、審理期間だけでなく審理の計画を定めるべき旨を規定する方が望ましい。

5.「第9 証人尋問等」について

証人尋問および通訳について、「相当と認めるとき」にウェブ会議等により行うことができることとすることに賛成する。一方、裁判所がどのようなときに「相当と認める」のかについて、具体的な事例を挙げた指針を策定するなどして明確にすることが望ましい。

また、証人に宣誓をさせたことは口頭弁論調書の記載事項とされていることから、書面に代わる新たな形式による宣誓書を創設するまでもなく、宣誓書の作成自体を要しないこととすべきである。

6.「第11の2(3) 新たな和解に代わる決定」について

新たな和解に代わる決定の規律を設ける【甲案】に賛成する。

ただし、決定の手続要件として、(注4)のように、当事者に異議がないこと又は当事者が同意していることのいずれかを必要とすべきである。

また、当事者が2週間の不変期間内に受訴裁判所に異議を申し立てたときは、和解に代わる決定はその効力を失うとされる一方、裁判所が不適法であると認めるときは、異議の申立てを却下することとされているが、不服申立ての機会を設ける必要がある。

7.「第12の2 裁判所外の端末による訴訟記録の閲覧及び複製」について

利害関係のない第三者によるインターネットを通じた閲覧に関しては、営業秘密・プライバシー保護の観点から弊害が大きくなる恐れがあることから、閲覧を認めない【乙案】に賛成する。

8.「第12の4 閲覧等の制限の決定に伴う当事者の義務」について

訴訟の当事者等又は補佐人が、閲覧等の制限の対象となる秘密を、正当な理由なく、当該訴訟の追行の目的以外の目的のために利用し、又は当事者等及び補佐人以外の者に開示してはならないとすることに賛成する。ただし、どのような場合に「正当な理由」があると判断されるかは明確にすべきである。その上で、実効性を担保するため、義務違反に対する罰則を設けるべきである。

以上

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