会長コメント/スピーチ 会長スピーチ  東海地方経済懇談会における榊原会長挨拶

2014年11月17日(月)
於 名古屋観光ホテル

経団連会長の榊原でございます。

本日は、三田会長をはじめとする中部経済連合会の皆様、岡谷会長をはじめとする東海商工会議所連合会の皆様には、ご多忙の中ご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

私は当地愛知県の出身でございまして、学生時代を過ごした、ここ名古屋で、東海地方経済懇談会を開催できることを大変嬉しく、また懐かしく思っております。開会にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

ご案内の通り、現下の日本経済の最重要課題は、デフレからの脱却を確実に果たし、経済の再生を実現するということでございます。企業業績や設備投資、雇用・所得の環境は底堅く推移しておりまして、景気は基調としては緩やかな回復が続いていると言うことができると思います。ただ、本日朝、公表された7-9月期の実質GDP成長率は、年率でマイナス1.6%と、消費税率の引き上げに伴う住宅投資の減少や、在庫の減少が大きく足を引っ張る結果となりました。消費や輸出の伸びが弱いことに加え、円安の負の影響が地方や中小企業を中心に顕在化していることも相俟って、今は、まさにデフレからの脱却と経済の好循環を実現できるか否かの正念場の時と言えるのではないかと思っております。目下、消費税再引き上げの是非を巡っての議論の最終段階にありますが、今はまさに、国を挙げてあらゆる政策や手立てを総動員すべき非常に重要な時期であると考えております。

経済界といたしましても、企業が成長戦略の主役である、こういった認識の下に、思い切った成長戦略に転換して、新たな成長機会を創出し、経済の好循環を創り出していかなければなりません。

特に重要となるのは、企業が、積極果敢に研究開発や技術開発に挑戦して、イノベーションを進めていくことではないかと思います。これは製造業に限らず、非製造業においても新たな産業、新たなイノベーションに挑戦していくということです。

わが国は、1960年代から70年代にかけての高度経済成長期を経て、世界第2位の経済大国を築き上げました。その原動力となったのは、「技術立国」日本の圧倒的な技術力と当時の社会全体の燃え上がるようなダイナミズムであったと思います。私は、今こそ日本はあの時代の「技術立国」日本の原点に立ち返って、懸命に技術開発・技術革新に取り組み、そして世界をリードしていく必要があると思っております。先ほど、三田会長も触れられましたが、ご当地名古屋大学の赤崎名誉教授と天野教授がノーベル物理学賞を受賞されました。私は、これはまさに「技術立国」日本を先導する快挙であり、日本全体に大きな勇気を与えた出来事であったと思っております。われわれ企業もこれに続く意識で、日本経済を力強く牽引する当事者として、革新技術の開発を通じて、新たな事業、新たな産業を起こしていく必要があると考えております。

一方、経済の好循環をしっかりと回すためには、こういった事業活動を通じて企業収益の拡大を図り、雇用の拡大や賃金の引上げに繋げていく必要があると考えております。私は、経済財政諮問会議等の場を通じて、政府に対して、それに向けての環境整備の実現を強く働きかけているところでございます。

そのひとつは、企業活力の向上に資する、一層の規制緩和、一層の制度改革であり、もうひとつは、法人税の改革であります。法人税改革については、2015年度から実効税率引き下げを開始し、3年を目途に20%台とし、最終的にはOECD諸国並みの25%程度まで引き下げる必要があると考えております。また、民主導のイノベーションを後押しするためにも、研究開発税制の維持・拡充も必要であります。先日、麻生財務大臣と懇談をいたしましたが、そういった枠組みの中で、来年度には「稼ぐ力」のある企業には実質的な税負担の軽減になるような税制を、また賃上げを阻害しないような制度設計を要請したところです。

一方、エネルギー問題ですが、エネルギーコストの上昇は非常に深刻でございます。経済の好循環を実現する上で大きな阻害要因となりつつあります。これを解決するためには、安全性が確認された原発については、再稼働プロセスを加速しなければならないと考えております。また、電力価格上昇の大きな要因となっている再生可能エネルギーの固定価格買取制度の抜本的な見直しも早急に行う必要があります。先日、宮沢経済産業大臣と懇談した際にも、この2点を強く要請し、ご理解をいただいたところでございます。

経団連といたしましては、只今申し上げたような課題への対応を含め、経済再生に向けた取組みに全力を傾注してまいります。その実現に向けては、産業の集積地として、わが国随一の「ものづくり圏」を形成し、日本経済を牽引しておられる東海地方の皆様との協力が不可欠となります。本日は限られた時間ではございますが、ご当地の経済活動の現状をお伺いすると共に、経済の更なる発展に向けての課題、あるいは問題意識をお伺いして、率直な意見交換をさせていただきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

以上、私の開会の挨拶とさせていただきます。

以上