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会長コメント/スピーチ 会長スピーチ 経団連定時総会における中西会長挨拶

2019年5月30日

平成が終わり、「令和」の時代が始まりました。改めて振り返ってみますと、平成は、その名の通り、戦争のない平和な30年でしたが、内外ともに非常に変化の大きい時代であったと思います。

国内では、バブルの崩壊後、経済の低迷が長く続きました。第二次安倍政権が発足して、私たちはようやく経済再生への足掛かりをつかむことに成功しました。その後、今日に至るまで、緩やかながらも安定的な経済成長を実現してきたところです。

世界に目を転じますと、経済のグローバル化が進展する一方、パワーバランスが大きく変化し、新たな国際経済秩序を模索する時代を迎えております。そうした中、日本が政治の安定という強みを活かして、リーダーシップを果たしていくことが期待されております。

また、世界全体を席巻しつつあるデジタル化の急速な進展により、私たちの暮らしを支える社会や文化の基盤そのものが劇的に変化しています。最も大きな影響を受けるのがビジネスであり、企業は生き残るために、過去に捉われない大胆な発想と対応が不可欠になっております。

経団連は、引き続き、こうした変化を真正面から受け止めて、AIやIoTなどの最先端技術を積極的に活用することにより、わが国の成長の仕組みの変革を促します。そして、世界が直面する様々な社会課題の解決に貢献してまいります。そこで、この1年間、注力したいテーマ、4点について、申し上げます。

(成長戦略の推進 - Society 5.0 for SDGsを中心に)

第一は、「Society 5.0 for SDGs」の実現です。私は会長に就任してから、今後の成長戦略として「Society 5.0」を日本が提唱する世界をリードするコンセプトにしようと力を注いできました。「Society 5.0」の社会実装を加速化することが2年目の大きな課題です。

そこで、多岐にわたるデジタル化の課題を議論する「デジタル・トランスフォーメーション会議」を新設し、新たな成長戦略を描いていきたいと思います。

併せて、Society 5.0の社会実装を支える人材の育成が必要であり、経済界と大学との忌憚のない対話を継続します。新たな成長を担う人材の教育や企業の採用・処遇のあり方について議論を深め、具体的アクションにつなげてまいります。

(経済構造改革の推進)

第二は、経済構造改革です。成長と両立する財政健全化や持続可能な社会保障制度の確立をはじめとする、経済構造改革の実現に取り組みます。このため、新たに「経済構造改革会議」を立ち上げ、経済界の意見を発信します。

(持続可能なエネルギー・環境政策の実現)

第三は、待ったなしのエネルギー問題です。わが国の電力システムは危機に直面しており、現状を放置すれば、電力の質の低下や料金の高騰につながりかねません。

こうした危機感の下、本年4月、経団連は、複線シナリオによる課題解決の必要性を提起いたしました。今後は、停滞する電力投資の活性化、ひいては日本を支える電力システムの維持・高度化を実現するため、具体的アクションを強化してまいります。

(民間経済外交の積極展開)

第四は、民間経済外交です。グローバル社会に目を転じますと、米中の貿易摩擦が最大の懸念事項です。これに加えて英国のEU離脱を中心とする欧州の政治情勢、北朝鮮問題をはじめとする地政学的リスク要因の顕在化が懸念されます。極めて不透明な国際情勢であり、経済と外交、安全保障を一体的に議論する必要性を痛感しています。

こうした中、民間経済外交の担い手として、経団連への期待が高まっております。また、本年から来年にかけて、G20大阪サミット、ラグビーワールドカップ2019や東京オリンピック・パラリンピック大会など、数多くの国家的イベントが日本で開催されることとなっております。また、2025年には大阪・関西万博の開催が決定いたしました。日本の存在感を世界にアピールし、リーダーシップを発揮していく絶好の機会が到来します。

そこで、この機を逃さず、積極的に民間経済外交を展開してまいります。様々な機会を通じて、経済界の立場から、ルールに基づく、自由で開かれた国際経済秩序の重要性を、世界に向けて発信・共有いたします。

経団連は、日本の経済界を代表する組織として、会員の皆様の負託に応え、経済界の公正な意見をもとに政策を提言し、その実現に努めてまいります。今年度も経団連活動に引き続きのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

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