会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  定例記者会見における中西会長発言要旨

2019年5月20日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【2019年1-3月期GDP速報】

通常の景気の波であり、重大な変化があったわけではなく、日本経済は引き続き回復基調にあり、底堅いと認識している。設備投資は、業種によって異なるが、日本国内全体で見れば陰りは見えない。経営者の多くは、デジタルトランスフォーメーションに向けた従来とは異なるビジネスモデルの構築を志向しており、そのための投資にも強い意欲を抱いているようだ。

経団連メンバーの経営者と議論していると、そうした国際関係の不透明性などの懸念材料は承知の上で、次世代に向けて打つ手を懸命に考えていることがひしひしと伝わってくる。

【消費税率引き上げ】

凍結すべきとの意見も散見されるが、今の国家財政について国民の間でしっかりと危機感を共有するためにも、消費増税は予定通り実行すべきである。経済界としてこの考えを変えるつもりはない。

【最低賃金の引き上げ】

日本の最低賃金が諸外国と比較して相対的に低いことは理解している。徐々に引き上げていくことに反対はしない。ただし、経団連会員企業からは、3年連続3%以上という今の引き上げでも限界との声が多い。最低賃金を引き上げたからといって、景気浮上につながるとは思えず、何を目的に引き上げるのかしっかり議論すべきである。なお、経営者の観点からは、そもそも最低賃金が影響するような経営をすべきでないと思っている。

【コンビニ業界における食品廃棄対策】

コンビニ業界における消費期限間近の商品の値下げは、各コンビニの販売戦略の問題である。食品の廃棄率は、日本のコンビニ業界だけではなく、世界各国の食品に携わる業界全体の問題である。食品ロスを減らしていくことは世界的な潮流であり、課題である。

【米国輸出規制リストへのファーウェイの追加】

5Gをめぐる米中の攻防戦は、これまでにない技術防衛の様相を呈している。各国の5Gの整備に向けた対応は、自国のインフラ整備状況などにより異なってくると想定される。他方、次世代スマートフォンの個人向けサービスは進展していくと考えられ、国の戦略とビジネスが入り混じった争いになるだろう。

【米国による機微技術管理強化への対応】

2018年8月に、米国で、安全保障に関する対米投資や機微技術に関する輸出管理規制の強化を盛り込んだ国防権限法が成立し、「輸出管理改革法」(ECRA)と「外国投資リスク審査近代化法」(FIRRMA)が制定された。現在、米国では、米国内への投資の審査や、米国からの輸出規制を強化する細則が議論されている。こうした機微技術の管理強化の動きが、日本企業のサプライチェーンや日本経済にどのような影響を与えるのかを注視し、我が国企業の対応のあり方を検討する必要がある。そのための取り組みの一環として、この大型連休中に訪米した。

従来の輸出管理はワッセナー・アレンジメントという多国間の枠組みだったが、今般の動きは米国政府による政策判断である。今回の訪米で、これらの規制を所管している財務省や商務省の実務者トップと議論した。日本の経済界の意見を期待しているとのことだったので、経団連としても、今後、必要なインプットを適時適切に行いたい。

訪米中、共和党、民主党、双方の連邦議員とも意見交換した。いずれの議員も中国に対し、貿易不均衡にとどまらない危機感を抱いているとの感触を得た。改めて、日本経済界から、米国に対して、継続的に意見を伝えていくことの重要性を感じた。

以上