会長コメント/スピーチ 記者会見における会長発言  九州経済懇談会後の共同記者会見における十倉会長発言要旨

2022年3月9
一般社団法人 日本経済団体連合会

【九州の半導体集積と地域交通ネットワーク】

TSMCの進出が決まり、九州での半導体産業の集積が期待される。半導体は産業のコメと言われ、DXの要となるものである。半導体の製造には設計、設備、材料が必要であり、日本は材料分野で現在も世界をリードしている。このメリットをTSMCに感じてほしい。半導体産業に従事する人材の継続的な育成も重要であり、TSMCが国内に新たな工場を設けることの意義は大きい。九州が日本の半導体産業を牽引することを期待する。

武雄温泉駅・長崎駅間の西九州新幹線が近く開業することは喜ばしく、歓迎である。早期に博多・長崎間が開通することを期待している。整備方式が未定の部分については、引き続き、国を含めた関係者間の協議を見守りたい。

九州では、豪雨災害を受けた肥薩線の運休が続いている。赤字路線を復旧させることの妥当性については議論があると聞く。一般論として、人が直接会うことは重要であり、地域交通ネットワークの是非は経済性だけで判断されるべきではない。それがバスなのか鉄道なのかについては、地域の事情もあろう。人口集約の程度など地域の事情を踏まえつつ、最適なあり方について関係者間で検討を深めてほしい。

【ウクライナ情勢】

西側の多くの国がロシアを非難しており、ロシアに対する経済制裁が広がっている。同時に、各国はエネルギー安全保障の観点から、現実的な対応をしている。米国は産油国であり、ロシア産原油の禁輸による米国経済への影響は限定的と言われている。英国にも北海油田がある。他方、ロシアにエネルギーを依存するドイツなど欧州諸国に配慮し、ロシアの最大手銀行はSWIFT排除の対象から除外されている。官民で開発に関わってきたサハリンプロジェクトについて、日本も同様の観点から、各国と連携、協調しながら対応していくべきである。

原油や小麦の価格は一段と上昇している。中長期的には代替地からの調達が可能かもしれないが、しばらくは高値の状態が続くことを覚悟しなければならない。中小企業も含め、価格転嫁を進めることも必要である。

【日韓関係】

日本と韓国は長い交流の歴史を有するパートナーである。日韓関係が早期に正常化し、1998年の日韓パートナーシップ宣言の精神に立ち返り、未来志向の関係を構築していくことを心から願っている。経済界としても、引き続き、交流を促進してまいりたい。

以上