月刊 Keidanren 2001年2月号 巻頭言

21世紀の課題

浜田委員長 浜田 広
(はまだ ひろし)

経団連人材育成委員長
リコー会長

 われわれは、たくさんの懸案を持ち越して21世紀を迎えてしまった。90年代、失われた10年の間に、日本経済は新しい成長軌道に乗らず、GDPの規模をはるかに超える国家債務を積み重ね、年金や健保も破綻が秒読みの状態である。21世紀を生きる若い人たちに、今の時代を表現する一語を選べといえば、「先行き不安」と答えるのではなかろうか。誠に残念な状態であり、これはとりもなおさずわれわれの世代の各界のリーダーの責任である。

 今世紀最初の10年間はそれら一つひとつに解決の糸口を見つけ出し、行動に移さなければならない。しかし、さらに大きな課題がある。私は21世紀を通じての最大の課題は、世界的規模で「地球環境問題」、日本の国家レベルで「教育問題」ではないかと思う。

 資源エネルギー・食糧問題を含む環境問題は、ひとたび、地球の限界が現実のものになりはじめた時、最も顕著な影響を受けるおそれのある根なし草の日本にとって看過できない重要事項であることを考えれば、日本は二つの大きな課題に直面していることになる。

 「ピンチをバネにして……」とか「窮すれば通ず」とかいう言葉がある。環境対応、保全のテーマに対し、その技術、ルール、システム、国民的行動のあらゆる面で日本が世界をリードできる存在になるべき世紀ではないかと思う。

 教育改革に関しては、もう議論は出尽くした。あとはただ実行あるのみである。それも、国会で審議して、文部科学省を軸に、各県教委の指導のもとに、などと考えていたら、10年河清を待っても何も変わらないおそれがある。現在のこのような状態を招いたのは、すべてわれわれ大人たちの責任である。各界、各地で枢要な立場にあるすべての大人たちが、謙虚な反省のもとに何か一つでも教育に役立つ行動を始めることこそ肝要ではないかと思う。


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