月刊・経済Trend 2005年7月号 巻頭言

教育改革の焦点

草刈副会長 草刈隆郎
(くさかり たかお)

日本経団連副会長
日本郵船会長

本誌1月号に「これからの教育のあり方について」というタイトルで書かせて貰った。教育問題委員会での検討状況を踏まえて、問題意識と改革の方向性に関してまとめたもので、1月18日には「これからの教育の方向性に関する提言」を発表した。

国際学力調査等により日本の基礎学力低下が明らかになったこともあり、マスメディアが教育を取り上げない日はないと言っても過言ではない。また、公的・私的団体による提言やアピールの類も多数提起されており、教育改革はまさに、わが国における国民的な重要関心事となっている。

行政においては、中央教育審議会に義務教育特別部会が設置され義務教育改革に関する審議が行われており、秋には最終報告の答申がなされる予定とのこと。また、政界においても教育基本法改正論議が高まっており、義務教育改革は喫緊の課題と言えよう。

義務教育に関しては全ての国民が何らかの知見を有しており、その改革に関して多様な意見が提起されているが、論点は多岐にわたり、議論を集約することは容易ではない。しかしながら問題の緊急性を考えると、対立的な議論をいつまでも継続すべき状況ではなく、一刻も早く具体的な改革に着手すべきである。その際に、最重視すべきキーワードは「多様性」と「競争⇔選択」であろうと考える。

従来の官主導の画一的システムから、多様な教育主体と教育人材の参入と競争を促進し、最も利害関係を有する教育の受け手による、自由な選択を実質的に担保するシステムへ転換させ、現場の創意工夫と自律を引き出すことにより、教育の現場力を回復するという考え方は広範な賛同が得られるものと信ずる。この部分においてコンセンサスが確立できれば、個別論点における意見の相違は関係者が英知を結集して克服できるはずである。

将来を担う世代に対する責任感を関係者間で共有し、改革の足場を早急に固めて、具体的な改革を加速すべく、微力ながら貢献していきたい。


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